マーケティングフレームはマーケティングの計画の立案、実行に役立つテンプレートです。フレームワークを使いこなすことで計画の精度が上がり、ビジネスの成功へ近づくことができます。
しかしマーケティングフレームワークは長年研究されてきたこともあり、その数が多いです。そのため、どのフレームワークをどのように使えば良いか分からないこともあります。
本稿ではマーケティング戦略の作成から分析、再実行に役立つフレームワークを解説しています。
なぜマーケティングのフレームワークの活用が重要?
マーケティングについて学ぶ時、必ずそのフレームワークについて学びます。しかしフレームワークの活用は重要なのでしょうか。その答えは非常に重要です。
マーケティングのフレームワークはマーケティング戦略を考える時に役立ちます。フレームワークを利用することで以下の利点があります。
- 戦略に関わる事柄の抜け漏れなど防ぎ、思考の整理がしやすい
- その場しのぎの戦略、対応を防ぎ、持続的な成長を目指せる
マーケティングのフレームワークを利用する時のポイントは次の2つです。
- ロジカル思考: ロジックツリーを用いて、論理的に戦略を計画します
- MECE: 抜け漏れやダブりを防ぐことで、計画の精度を高めます
これらを意識することでマーケティング戦略の精度があがります。
マーケティング戦略を立てる前に役立つフレームワーク
マーケティングのフレームワークは市場環境の分析や、マーケティング戦略をどのように行うのか計画するために用いられます。具体的にはSWOT分析やPEST分析、ファネル分析などです。
SWOT分析
SWOT分析はマーケティング戦略の前段階である市場環境分析で主に行われます。SWOT分析の結果から、プロダクトがおかれる市場環境や事業の課題について理解できます。
SWOT分析とは「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の頭文字から、そう呼ばれます。各項目の詳細は次の通りです。
- 強み: 戦略目標の達成にプラスとなる企業内部の特性
- 弱み: 戦略目標の達成にマイナスとなる企業内部の特性
- 機会: 戦略目標の達成にプラスとなる企業外部の特性
- 脅威: 戦略目標の達成にマイナスとなる企業外部の特性
多くの場合、機会と脅威はPEST分析の結果を用いることが一般的です。
PEST分析
PEST分析もSWOT分析と同じようにマーケティング戦略の前段階である市場環境分析で主に行われます。PEST分析の結果から、プロダクトがおかれる市場環境や事業の課題について理解できます。
PEST分析は「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」の頭文から造られた言葉です。各項目の詳細は次の通りです。
- 政治: ビジネスを規制する法律や政治動向など
- 経済: 経済水準や所得、為替、金利など
- 社会: 人口動態やライフスタイル、価値観、流行など
- 技術: ビジネスに与える技術の動向など
3C分析
3C分析もこれまでのフレームワークと同じように、マーケティング戦略の前段階で主に行われます。自社が持つビジネス上の課題や優位な点について理解できます。
3C分析とは「顧客や市場(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」を指します。各項目の詳細は次の通りです。
- 顧客や市場: 市場規模やその成長性、顧客のニーズと購買行動など
- 競合: 競合企業の市場シェアやポイント、対象となる競合など
- 自社: プロダクトの現状やリソース、バリューなど
3Cの中で最も重要な項目が「顧客と市場」です。顧客が抱える悩みや不満などをヒアリングし、どのような解決策を求めているのか理解することに努めましょう。
7Sモデル
7Sモデルはマーケティング戦略から見た組織の特性を理解するのに役立ちます。マーケティング戦略は組織体制を含め、どのように実行していくかが命運を分けます。そのため7Sモデルを利用する必要があります。
7Sモデルは「戦略(Strategy)」「ストラクチャー(Structure)」「システム(Systems)」「スタッフ(Staff)」「スキル(Skills)」「スタイル(Style)」「共有された価値観(Shared Values)」頭文字をとってそう呼ばれています。
- 戦略: マーケティング戦略の定義
- ストラクチャー: マーケティング戦略を組織的にどう行うか
- システム: 事業運営をサポートする技術的なシステム
- スタッフ: 社員の特性や報酬制度など
- スキル: スタッフが持つ能力
- スタイル: 組織の文化や協力企業との関係など
- 共有された価値観: 企業が掲げるビジョンなど
BCGマトリクス
BCGマトリックスはボストンコンサルティンググループが開発したフレームワークです。市場シェアと市場の成長率をもとにプロダクトを4事象に分け、評価します。これにより市場環境に応じたリソースの投入量など、俯瞰的にマーケティング戦略を検討できます。
負け犬: 成長率やシェアが低いプロダクト
問題児: 高成長市場でシェアが低いプロダクト
花形: 高い市場シェアを持つ高成長市場でのプロダクト
金のなる木: 低成長市場でシェアの高い製品
高成長の市場は魅力が高く、競合企業の参入が予想されます。そのため積極的な投資が必要となります。しかし、いずれ市場の成長は伸びとどまり、現状維持か下降します。
そのような市場では競合企業は参入はしてもうまみがないため、追加の資金投資を行う必要性は低くなります。追加資金がかからない状態で市場シェアを取り続けていれば、当然そのプロダクトは利益貢献することでしょう。
マーケティングの戦略的フレームワーク
フレームワークを利用することで一部重複が見られることもあります。しかしフレームワークの活用はマーケティングへの取り組みを分かりやすく可視化することに意味があります。多様なフレームワークを用いて、複眼的に顧客や市場と向き合うことがマーケターに求められるのです。
STP分析
STP分析はプロダクトが対象とする顧客をクリアにする役割を持っています。STP分析は全てのマーケターに必要なフレームワークです。
STPとは「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」の略です。各要素からプロダクトに最適な顧客を洗い出すことができ、競合と比較してどのポイントで自社プロダクトが良いのか分かります。
ファネル分析
ファネルとは漏斗(ろうと)を指し逆三角や、すり鉢状の形をしており顧客の認知から購買までを分析するのに役立ちます。
顧客の行動に合わせたファネル分析を行うことで、顧客が欲求や意志に添えたマーケティング活動ができているか測ることできます。
詳しく知りたい方は「【徹底解説】マーケティングファネルとは?効果的な作り方から最新事情まで 」をご覧くださいませ。
4P分析
4P分析はマーケティング戦略立案プロセスの中のマーケティングミックスで活用するフレームワークです。次の頭文字をとって4Pと呼ばれています。
- 販売戦略(Product)
- 価格戦略(Price)
- 流通戦略(Place)
- 販促戦略(Promotion)
詳しく知りたい方は「マーケティングの4Pとは?基礎知識から4C分析との違い、事例を解説」をご覧くださいませ。
4C
4C分析は4P分析同様、マーケティング戦略立案プロセスの中のマーケティングミックスで活用するフレームワークです。企業目線の4P分析と異なり、4C分析では顧客目線に立って戦略立案を行うため、顧客により寄り添うことができます。
4C分析は次の言葉の頭文字に由来します。またこれら4つの要素は4Pのそれと対になる関係を持っています。
- 顧客にとっての価値(Customer Value)
- 顧客にとっての費用(Customer Cost)
- 顧客にとっての利便性(Convenience)
- 顧客とのコミュニケーション(Communication)
マーケティングミックスの7P
マーケティングミックスは製品価値や収益を最大化するために、最適な方法を検討するためにうみだされたフレームワークです。マーケティングミックスは顧客と製品をつなぐ戦略のため、事業の成功と失敗の鍵を握る重要な役割を持ちます。
7Pは4Pや4Cだけでは検討できない、サービスなど無形のプロダクトの特性に合わせて作られています。7Pの要素は4Pのそれに加え、次の3つのを加えます。
- 物理的証拠(Physical Evidence)
- 要員(Personnel)
- 業務プロセス(Process)
マーケティングミックスについて詳しく知りたい方は「マーケティングミックスとは?その重要性や4P分析、活用方法も解説 」をご覧くださいませ。
5フォース分析
マイケル・ポーターにより提唱されたファイブフォース分析では、市場で働く5つの力によって収益性を測ることができます。これによってリソースの投入量や新規参入、事業撤退の判断に役立ちます。ファイブフォース分析の各要素は次の通りです。
- 業界内の競合
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 売り手の交渉力
- 買い手の交渉力
プロダクトライフサイクル
マーケティング戦略において大切なことは、リソースを投入してどれだけの成果が得られるかどうかです。これはプロダクトのライフサイクルによって変化するため見極める必要があります。プロダクトのライフサイクルのステージと特性は次の通りです。
- 導入: 売上高が低く、競合企業がほとんどいない
- 成長: 売上高が高まり、競合企業も増える
- 成熟: 売上高が伸びとどまり、競合企業とシェアの奪い合い
- 衰退: 売上高が低下し、競合企業も次第に撤退していく
CLVモデル
CLVモデルは顧客がプロダクトに支払う生涯金額を算出します。これにより将来の収入とその現在価値に基づいてマーケティング戦略を実行できます。具体的にはCLVモデルの中でコストを調整することや、CLVを向上する施策を検討することができます。
マーケティングフレームはマーケティングの計画の立案、実行に役立つテンプレートです。フレームワークを使いこなすことで計画の精度が上がり、ビジネスの成功へ近づくことができます。
しかしマーケティングフレームワークは長年研究されてきたこともあり、その数が多いです。そのため、どのフレームワークをどのように使えば良いか分からないこともあります。
本稿ではマーケティング戦略の作成から分析、再実行に役立つフレームワークを解説しています。
グロースのフレームワーク
グロースハックとは徹底的に分析・改善・実行し、ユーザーの数や質を向上させ続け、サービスの成長させていくことを指します。
グロースハックの成功事例を紹介します。暮らすように旅するで有名なAirbnbはグロースハックで成長しています。Airbnbは予約が伸び悩む物件を分析したところ、写真のクオリティーに問題があることを発見しました。そこでプロのカメラマンに撮影を依頼したところ、予約数が3倍程度拡大しました。
グロースハックにはマーケティング戦略の実施の結果と根気強く対峙することが必要です。
グロースハックについて詳しく知りたい方は「今さら聞けないグロースハックとは?成功事例や分析手法を解説 」をご覧くださいませ。
ピボット分析
ピボットとは経営の方向性を変更する経営判断のことを指します。これはマーケティング戦略と顧客ニーズとのズレを解消するために行います。
ピボットは顧客に合ったプロダクトや戦略を実行するために欠かせないプロセスです。そのため素早く多くのピボットを行い、マーケットにフィットすことが成功への近道だと言えるでしょう。
AARRRモデル
グロースハックでもっとも重要だと言われているのがAARRRモデルです。AARRRモデルはサービスの成長段階を表す頭文字をつなげたものです。5つの成長段階は次の通りです。
獲得(Acquisition)
活性化(Activation)
継続(Retention)
紹介(Referral)
収益(Revenue)
それぞれのデータを分析することで事業を把握し改善することができます。AARRRモデルの特性はどの事業においても利用することができ、「的確な成長フェーズ」に「的確な指標」を用いて「的確な改善策」を行うことができます。そのためグロースハックと相性が良いのです。
行動のフレームワーク
事業の成長にはマーケティング戦略の実行が欠かせません。またその結果に応じた見直しや再実行を繰り返すことで、マーケティング戦略が洗練され顧客とプロダクトがフィットします。
ここでは目標の達成のために役立つ行動のフレームワークをご紹介します。
PDCAサイクル
PDCAは「計画(Plan)」「行動(Do)」「検討(Check)」「実行(Action)」の4つのステップの頭文字から呼ばれています。これらステップを限りなく繰り返すことで、マーケティング戦略を磨いていくことができます。
OODAループ
OODAループは万能な思考のフレームワークです。OODAループは「見る(observe)」「分かる(orient)」「決める(decide)」「動く(act)」を「見直す(Loop)」の5つのステップを繰り返すフレームワークです。
OODAループは汎用性が高く、オフラインとオフライン、B2CやB2Bでも活用することができ、PDCA同様、マーケティング戦略の洗練が期待されます。
OKR
OKRとは目標設定とその管理を担います。OKRは目標と主要な結果(Objectives and Key Results)の略称です。シリコンバレーを中心に導入する企業が多く、注目を集めている手法です。
OKRは従業員が同じ方向性を持って、明確な優先順位に基づき一定のペースで計画を進行していきます。従来の計画方法と比較して高い頻度で目標を設定し、再評価します。
まずフレームワークを作るところから始めてみよう
本稿ではマーケティング戦略の作成から分析、再実行に役立つ
フレームワークを紹介してきました。フレームワークを活用することでマーケティング戦略の精度があがります。また複数のフレームワークを使うことで、複眼的に顧客や市場、競合企業について考えることができます。持続的な企業の成長には根気強く、戦略の評価、修正、再実行を繰り返していくことが重要です。
マーケティングは経済を支える根幹だと確信。
INFOHUBでは主に「マーケティング」を中心に執筆し、マーケティングを使って生活を豊かにする人材を増やすことを目指しています。
大阪経済法科大学→EUで海外インターン→金融機関勤務→事業会社で経営企画→陣之内商店 代表(webコンテンツ製作・小売業)
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