「ペルソナ」という用語をご存知ですか。昨今、マーケター、デザイナー、ライター、営業、開発、などあらゆる人が、ペルソナを活用しているため、耳にしたことがある方は多いかと思います。
自社のプロダクトが伸び悩んだ、ヒット商品を企画したい、そんなときに力を発揮するペルソナマーケティング。
この記事では、そもそもペルソナとはなんなのか、ペルソナ設定の注意点、その成功事例などを幅広く紹介し、どのような情報に基づいてペルソナ設定を行うべきか、その実践的な手法を惜しみなく解説します。
この記事のまとめ
ペルソナ (Persona)を設定するとは、ターゲットとする顧客のプロフィールや属性情報をもとに、理想のモデル顧客を擬人化することをいいます。
ペルソナを設定することで、
- ユーザー視点に立った商品を
- チーム同士で共通認識を持って
- ユーザー・消費者から共感を得る開発ができます。
ニーズが多様化した現代において、むやみにペルソナを設定すると逆効果です。ペルソナをひとり設定することで、ターゲットを絞りすぎたり、共感性を失ったりして、結果的に顧客を失うことになりかねないからです。
そうならないために、ここでは
- 定性的・定量的なデータから導く最適なペルソナ
- メディアのコンテンツにおけるペルソナ
- プロダクトにおけるペルソナ
このようなペルソナを構築する方法をまとめています。
ペルソナとは?
ペルソナ (Persona)とは、理想のユーザー像のことを指すマーケティングの用語です。
1983年に元マイクロソフト (microsoft)の有名なソフトウェアエンジニアのアラン・クーパー (Alan Cooper)氏が提唱した概念で、元々はPCが家庭に広まる黎明期に「誰でも使いやすいソフトウェアをどうやってデザインするか」を考えるために考案されました。
しだいに、ユーザー目線の製品・サービスを提供するためにマーケティングに応用されるようになりました。
ペルソナを使ったマーケティングでは、顧客や市場のデータを基に実際に商品・サービスを使ってくれるだろうユーザーの、プロフィールや属性情報をかなり具体的に設定して、擬人化していきます。
- Aさん
- 女性
- 35歳
- 既婚
- 都内勤務
- カリフォルニアに移住予定
- 夫 35歳
- 小学2年生の女児一人
- 3年前からサウナにハマっている
- 半年ほど前から目尻の小じわが気になり始めている
ペルソナを想定すると、その人が私たちの商品やサービスをどこで知って、どのように使って、どんな感情を抱くのか、というように、実際に使用しているシーンを浮かびやすくなりますね。
このように、ペルソナマーケティングでは、理想的な顧客を架空に擬人化して、そのペルソナが我々の商品に出会ってから利用するまでのシーンを想像しながら、ユーザー目線の製品を作り上げていきます。
他に想定される要素は主に以下です。
人口統計的な属性 | 年齢、性別、居住地、家族構成、国籍 |
仕事の属性 | 業界、役職、勤務地、職歴、年収 |
行動 | 性格、趣味、好み、購買行動 ライフスタイル (平日、休日の過ごし方)、SNSの利用 |
価値観 | 興味、欲しいもの (ウォンツ) こうなればいいなと思っていること (ニーズ) |
ペルソナとターゲットの違い
どちらもユーザー像を表すため、よく混同されるマーケティングの用語ですが、人物像の設定の深さが異なります。
ターゲットは、「20代の女性向け」「会社員向け」といったようなマーケティングで対象とする顧客のグループのことを指す用語です。
ターゲティングとは、ニーズや性質ごとに顧客をいくつかのグループに分けてセグメンテーションし、どのグループ(層)の顧客を狙うかを定めて顧客を絞り込むことを指します。
市場規模や競合との差別化戦略など、顧客を「マクロ」な視点から分析することに長けています。
しかし、例えば、「20代の女性」というセグメントでは、あまりに広すぎて、製品開発やプロモーションが漠然としてしまいます。
そこで登場したのが、ペルソナマーケティングです。
ペルソナマーケティングでは、ターゲットの属性である「20代の女性」にさらに、「都内在住」「毎週、ヨガに通っている」「SNSはインスタとLINEを利用する」といった細かい設定を加えて架空の人物像を脚色していきます。
ターゲットとしたい顧客は誰なのかを、徹底的に分析して洗練させ、顧客像を誰が聞いても具体的にどんな人なのかイメージできるようにしたものがペルソナです。
ペルソナ設定のメリット-マーケティングの良質な意思決定と投資を実現する
ペルソナ設定のメリットを整理してみましょう。
ユーザー視点に立てる
ターゲットを擬人化して、詳細にその人のプロフィールを設定すると、ユーザーに対して親近感が湧いてきます。
すると、その架空の人物が、購入したり使用したりするシーンをリアルに想像することができるようになり、顧客の具体的なイメージを持ち、ユーザー視点で商品・サービスをデザインすることができます。
チーム同士で共通認識を作れる
ディレクター、開発、デザイナー、営業など、関わる人同士でAさんのプロフィールの共通認識があれば、「これってAさんぽくないよね」といったような言語化しにくいターゲットの顧客のイメージが統一され、ユーザーの共通のニーズを汲み取ったマーケティングの戦略をチーム全体で意思決定しやすくなります。
ユーザー・消費者から共感を得る開発ができる
ペルソナを設定してたった一人のために製品・サービスを作りこむことで、逆説的なようですが、多くのユーザー・消費者から共感を得てヒット商品が生み出されてきました。
あるペルソナにフォーカスして、ライフスタイルを徹底的に追求していかないとみえてこない、そのユーザーの本当のニーズが浮き彫りになるために、結果的に多数のユーザー・消費者から共感を得られるのです。
逆に、ターゲット層を広く設けたマーケティング戦略では、「万人受け」はするがパッとしない、といった製品やコンテンツが仕上がり、共感が薄れてしまう、ということがよく起こります。
ペルソナを設定する方法
ユーザーが多様化した現代において、「どんな人をペルソナに想定するのか」という問いは、想像よりもずっと難しいのではないでしょうか。
ペルソナをむやみに設定してしまったことで、逆に、消費者の共感を失い、結果的にマーケットを縮小してしまうという現象が実際によく起こるのです。
そのような背景からか、「マーケティングにペルソナを使うのは古い」といったネガティブな論調の記事も散見されるようです。
そうならないために、正しいペルソナ設定の方法をみていきましょう。
STEP1:徹底した情報収集を行う
ペルソナを的外れなものにしないために、近年では、市場調査や既存顧客の実データに基づいたペルソナ設定の重要性が叫ばれています。集めることができるあらゆる情報を収集しましょう。
過去の販売データ・顧客データ
これらは、顧客の豊富な情報源です。どんな人が買っているのか、どこで情報を手に入れたのか、どこで購入したのか、などの情報が詰まっています。
市場調査
業界全体の動向や競合の傾向をみていきましょう。既存の製品は、どこのターゲット層に支持されているでしょうか。市場自体の規模はどうでしょうか。
STEP2:情報を整理する
情報収集したデータの中から、きらりと光る、ペルソナの属性や好みを導き出すために、情報に優劣をつけていきます。
情報にスコアリングを行ったり、低、中、高といったような3段階評価をつけたりするとよいです。
情報を整理すると理想のユーザー像としてふさわしいターゲットの属性情報があぶり出されてきます。
STEP3:インタビューを行う
ここまでまとめてきた情報はあくまで事実に基づく「仮説」です。誤ったペルソナを設定することを避けるために、実際のユーザーにインタビューやアンケートを行なって、仮説検証を行いましょう。データからは見えなかった要素から、本当にその情報や分析は正しいかどうかが浮き彫りになるはずです。
その人たちの生態系や、最もシェアの多い顧客がどんな人たちなのか、一部のペルソナがもつ特異性など、数字だけではみえてこない定性的な傾向を抜け漏れなく捉えるようにしましょう。
ペルソナを設定する際の注意点
定性調査と定量調査を両方行う
ペルソナを設定するとは、たったひとりのユーザー像を作り上げることであるため、本質的には顧客の絞り込みを伴っているといえます。
そのため、絞り込みが的外れであると、成功確率が大きく下がってしまいます。
主観的なイメージが介入しやすい定性情報だけで、ペルソナを設定しないようにしましょう。定量調査を行い、客観的な分析することによって、成功確率の高いペルソナを作り上げることができます。
BtoBの場合は決裁者が誰なのかを軸に考える
BtoBでは、ペルソナ設定に組織の論理が加わることになります。
例えば、どれだけ担当者に良い印象を持ってもらっても、所属する組織の課題、その人の決裁権、事業の状況などが大きく影響することがあります。BtoBの場合には、決裁者が誰なのかを軸に考えましょう。
メディアとプロダクトのペルソナ論の違いに注意する
ここでの説明は、以下のペルソナを想定して説明します
- Aさん
- 女性
- 35歳
- 既婚
- 都内勤務
- カリフォルニアに移住予定
- 夫 35歳
- 小学2年生の女児一人
- 3年前からサウナにハマっている
- 半年ほど前から目尻の小じわが気になり始めている
メディアのペルソナの場合
メディアは、多様な人々に対して多様なコンテンツを提供できるポテンシャルがあるため、ペルソナの条件が多いほどターゲットが広がります。
「30代、丸の内のキャリアウーマンがオススメする、朝のクイックシワ対策」
こんな記事はAさんのペルソナの条件にぴったり合致していて、受けそうなコンテンツですね。では、例えば、こんなコンテンツはどうでしょう。
「カルフォルニアの天才マーケターは同世代結婚をどう考えるか」
「現地人でも知らないカルフォルニアの韓国料理の名店」
いずれも、Aさんのペルソナの条件に一部合致してはいますが、完全な一致ではありません。
しかし、同世代結婚というキーワードに対してAさんは興味を引くだろうし、カリフォルニアに移住する予定であればカリフォルニアの名店も惹かれるのではないでしょうか。
このように、メディアのペルソナの場合、一部のペルソナの条件にしか合致していなくとも共感性を失わない、ということがいえます。つまり、メディアにおいては「ペルソナの条件が多ければ多いほどターゲットが広がる」ということですね。
プロダクトのペルソナの場合
一方で、プロダクトのペルソナを考えてみます。
ここでも、例えばAさんのように、細かく、「年齢、既婚、勤務地…」といったようにペルソナを設定したとしましょう。
興味深いことに、この細かい条件を付与したAさんに対して、しわ対策化粧品のマーケティング戦略を打つと、ターゲットが局所的すぎて、自分のマーケットを縮小させることにつながります。
別に、30代も80代もシワには悩んでいるし、労働してる人もいれば、リタイアしている人もいますし、子供がいる人もいればいない人もいますよね。
プロダクトの場合は、共通したペインである「シワに悩んでいる」こと以外の条件が増え、USP (Unique Selling Proposition、「独自の売り提案」) やベネフィットと無関係なペルソナ条件を付与させていくと、消費者の共感性を失い、結果的にマーケットを縮小させるという現象が起きてしまうのです。
それを避けるために、プロダクトのペルソナ’は、プロダクト自体のUSPやベネフィットを中心に最大公約数的に設定しなければいけません。
今回ように、しわ対策の化粧品で戦略を打つならば
- ママ友とのランチ会をきっかけにエイジングを意識し始め、しわに悩んでいる
- 元々美容意識が高く、しわに最も良い商品を常に探している
というような設定がよいと考えられます。
市場規模 = (ペルソナやその同様人物の数)×利用意向×メンタルアカウンティング
であるため、消費者の共感性を失うということは、利用意向やメンタルアカウンティングの数値が悪くなってしまうために、結果的に市場規模の縮小が生じてしまいます。
プロダクトにおいては、ペルソナの条件を多くすれば、ターゲットが広がったり縮小したりすることを考慮に入れた上で、むやみにペルソナの条件を足すことによって市場を喪失しないように注意しましょう。
ペルソナの成功事例 – MEN’S TBC
メンズエステのMEN’S TBCは「三軒茶屋のワンルームマンションに住む都内のA学院大学に通っている20代前半の男性」のようにペルソナを設定して成功した事例です。
- 世田谷区三軒茶屋のワンルームマンションに住んでいている
- 夜は麻布にあるバーでアルバイトをしている
- ヘアケアやボディケアは安いだけでなく原材料・品質にもこだわっている
といったペルソナを設定しました。
ペルソナを分析してコンビニを中心に男性向けのコスメティックを販売するマーケティング戦略をとり、MEN’S TBCの認知度を上げることに成功しました。
このようなユーザー視点のブランディングによって、問い合わせ数が3〜4割アップしたようです。
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