一時トレンドワードとしても注目を浴びていた「グロースハック」。近年以前ほどの注目はありませんが、グロースハックは、マーケティングの上で欠かせない手法です。本稿ではグロースハックとはなにか、またグロースハックを身につけ、成功させるためのポイントを解説します。

グロースハックとは?

グロースハックとは、英語では「Growth hack」と書き、「サービスの成長に、徹底的に分析・改善・実行し、ユーザーの数や質を向上させ続けること」をさします。データやユーザーの声などを分析し、プロダクトを改善させる手法のことです。マーケティングとは違い、サービスやプロダクトの開発までにも影響を与えるといった意味でスケールが大きいWebマーケッターともいえます。

いつ生まれたのか

グロースハックが生まれたのは、Dropbox(ドロップボックス)創業当初のマーケティング担当をしていた起業家ショーン・エリスが2010年に提唱したことがはじまりです。ショーンはグロースハックの手法を用いてDropboxの市場拡大に貢献したと言われ、その後Facebook(フェースブック)やAirbnb(エアビーアンドビー)などの成長にも大きく影響を及ぼしています。


グロースハックの成功事例

グロースハックで成功した事例として、有名なのがDropboxです。Dropboxはユーザーを分析すると新規ユーザーの3分の1が既存ユーザーからの紹介だということがわかりました。その結果、紹介した人には250MBの追加ストレージを提供するというキャンペーンを開始しました。その結果、1年強でユーザーを10万人から400万人に拡大しました。

またAirbnbもグロースハックで大きく成長した企業です。予約が伸びていないのを分析したところ、共通の問題が写真のクオリティーということが発覚しました。その解消にプロのカメラマンに写真を撮影してもらったことです。その結果、予約数が3倍程度拡大しました。

一例ですが、このようにグロースハックを活用し、多くの企業が成長してきたこともあり、注目されている理由です。

グロースハックを始めるために必要な準備

本章では具体的にグロースハックを始めるために必要な要素をご紹介します。この要素がないとグロースハックを実施しようとしてもうまくいかないでしょう。

PMF検証

PMFとはProduct Market Fitの略であり、「良い市場を狙い、かつ、その市場を満足させることができる製品を持っている状態」のことをさします。グロースハックを行う上で、プロダクトのPMFの検証を行いましょう。PMFの検証の仕方は、そのプロダクトがなくなると心底困る人がユーザーに占める割合で図ります。PMFの割合が低い場合、グロースハックは効果がない場合があります。もし、PMFの割合が低い場合はプロダクト自体の改善やターゲットの変更を検討しましょう。

マインドセット

グロースハックを進める上で3つのマインドセットが重要です。まず1点目は、複利で考えることです。例えば、ユーザー数をKPIとした時に一週間では1000人の違いが、1年間では、18万人の違いになります。常に1%の改善を繰り返すことを意識しましょう。

2点目は、失敗を恐れないことです。グロースハックは100回中80回失敗すると言われています。そこで重要になるのが、いかに”早く”、”賢く”失敗するかです。失敗を重ね、成功の方法を探ります。

3点目は、シンプルであることです。Dropbox、Airbnbの例も施策はシンプルでした。大きなインパクトを出すためにはシンプルを常に意識しましょう。

フレームワーク

シンプルに考えるためにはシンプルなフレームワークを持っていることが重要です。グロースハックを進める前にしっかりフレームワークを頭に入れておきましょう。特に有名、そして効果的なのがAARRRモデルであり、グロースハック最強の武器ともいわれています。AAARモデルの詳細は後ほどご紹介します。

チーム

グロースハックを進める上で横断的なチームを構成することが効果的でしょう。チームを編成する際のポイントは、グロースの責任がある、CEOに直接報告する、データ分析が楽しめるかなどです。

ツール

グロースハックには、定量・定性のデータが欠かせません。そのため、どのようなデータが必要なのかを定義した上で、そのデータを最大限取得できるツールを用意するようにしましょう。

[PR]ビシネスニュースアプリ「INFOHUB」をダウンロードしよう

AARRRモデルとは?

グロースハック最強の武器ともいわれているのが、AARRRモデルです。AARRRモデルとは、サービスの成長段階を表す5つの言葉の頭文字をつなげたものです。それぞれの段階は、Acquisition(獲得)、Activation(活性化)、Retention(継続)、Referral(紹介)、Revenue(収益)にわかれ、それぞれの段階のデータを分析し可視化するしビジネス状況を把握し、改善施策を行います。

なぜAARRRモデルが最強と呼ばれるには、オンライン/オフライン、BtoB/BtoC関係なく適用できることです。また、全体俯瞰ができつつ、それぞれのフェーズにフォーカスして改善を行える点です。

グロースハックでは、「的確なフェーズ」に「的確な指標」を用いて、「的確な改善策」を行うことが求められ、そのためにAARRRモデルが相性がよいのです。

どのような手順でグロースハックを実践すれば良いのか

それでは実際にグロースハックを実践するためにはどのようなステップで進めるべきかご説明いたします。全体のステップは「ファネルの可視化」「改善項目の優先順位付け」「仮説立案」「施策立案」「仮説&学習」の5つに分かれます。

1.ファネルの可視化

第一ステップは、ファネルの可視化です。ファネルとは、ターゲットの行動や意識が深まるに伴い、人数が減ることからターゲットの推移を図式化したものであり、その形が漏斗に似ていることからこのように呼ばれています。ファネルには決まりはなく、AARRRモデルをベースにしたり、フローに合わせたりなど自社に適した形でターゲットのファネルを可視化しましょう。

2.改善項目の優先順位付け

ファネルを可視化したことにより、ファネル間の移行でどこに問題あるかが見えてきます。例えば、行動をベースにファネルを作成した場合、興味関心から契約への移行でユーザーが離脱していることがわかります。このように問題を洗い出し、インパクトが大きいものから優先順位をつけましょう。

3.仮説を立てる

問題があるということは課題があるということです。ここでなぜそのような課題が発生している原因は何なのか?ユーザーはなぜ苦痛に感じているのかの仮説を立てます。この仮説を検討する上で、ユーザーの声などの定性データや定量データを検証しながら進めます。

4.施策立案&実行

仮説が立てられたら、それに対応するための施策を検討しましょう。施策は一つではなく、たくさんリストアップしインパクトが大きく、速く実行できるものから試していきましょう。グロースハックでは数をこなすことも重要です。一つの施策の効果がなかったら、次の施策をすぐに実施しましょう。

5.仮説&学習

グロースハックで重要なのは高速PDCAを行うことです。施策を実行したら、その結果を分析し、また仮説を立案し、また施策を繰り返すというサイクルを繰り返しましょう。このサイクルを繰り返すことにより、より効果的な施策を立案も可能になります。

グロースハックを成功させるデータ分析のコツ

グロースハックを成功させるためにはデータ分析が重要です。ここではデータ分析のコツをご紹介します。

どんなデータを収集、分析したら良いのか

データ分析を行う上で、最も重要なのはどのようなデータを収集するか、分析するのかを明確にすることです。例えば、新規ユーザー登録率に関しての分析を行いたければ、年齢別の登録率、職業別の登録率などが必要になります。

データを明確にする時に有効な分析の一つが、コホート分析です。

コホート分析とは?

コホート分析とは、ユーザーを属性や行動履歴などの一定の条件でセグメンテーションし、セグメントごとの行動の変化を検証する分析方法です。時間の経過に伴うユーザーの行動の変化を把握できるため、スピード感もった分析、改善が可能になります。

レバレッジを見つける

レバレッジとはテコの原理のことをさします。つまり、レバレッジを見つけるというのは力を入れることにより大幅な成長が見込める指標を見つけるということです。例えば、Dropboxの場合は既存ユーザーからの紹介でした。Airbnbの場合は写真のクオリティーでした。このように、改善することにより大幅なインパクトが起きそうな指標を見つけることがデータ分析の目的でもあります。

ツールを最大限活用する

データの収集、分析等グロースハックを進める上で、ツールは欠かせません。グロースハックに欠かせないツールに例えば、Google Analyticsがあります。Google Analyticsでは、A/Bテストの機能が標準で備わっており、また、簡単にコホート分析も可能です。このように作業を進めていく上で、様々なツールを最大限活用しましょう。

まとめ

グロースハックとはなにかから、実際に行う上で何が必要なのか、そしてAARRRモデルなど実際に行っていく上で活用が欠かせない武器をご紹介しました。スタートアップなどにおいて有効なものというイメージですが、オンラインサービスだけでなくあらゆるビジネスに活用できる手法です。もちろんこれからグロースハッカーになりたい方からマーケッターの方までぜひ取得し、日々の業務の中で生かしていただければと思います。