企業やプロダクトと顧客をつなぐマーケティングコミュニケーションは、マーケティング戦略において最も重要な役割を担います。マーケティングコミュニケーションをうまく活用することで、顧客との信頼関係や売上・市場シェアの向上、ブランドの構築など事業を優位にすすめる効果が得られます。

本稿では「マーケティングコミュニケーションとは何か」「その戦略の立て方と注意点」「成功事例」についてご紹介しています。

マーケティングコミュニケーションとは?

マーケティングコミュニケーションとは企業のマーケティング活動で行われる顧客とのコミュニケーション(情報伝達)全般を指します。いわば企業と市場をつなぐ架け橋のような存在です。

マーケティングコミュニケーションは「誰(ターゲット顧客)」に「どんなメッセージ(何を伝えるか)」を「どこ(媒体)」で伝えるかが重要なポイントです。これらをうまく活用することで、ブランドの確立や顧客の増加などの効果が期待できます。

現代はSNSなどの普及により、コミュニケーションができる場所や機会が増加しています。以前までは広告やプロモーション活動を指していましたが、近年はデジタル化の背景を踏まえ、コミュニケーションはより広く定義されるようになってきています。

また昨今では顧客と双方向のコミュニケーションが取れるようになりました。そのためマーケティングコミュニケーションを4Pにおけるプロモーションと捉えるだけでなく、4Cのコミュニケーションを意識して行うと良いでしょう。

マーケティングの4P・4Cついてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
>>4P分析とは?
>>4C分析とは?


マーケティングコミュニケーションの主な手法

マーケティングコミュニケーションは全体的な情報伝達を指すため、その範囲は広いです。またデジタル化の影響でコミュニケートする媒体と機会が増え、その方法は多様化しています。ここではマーケティングコミュニケーションの代表的な例をご紹介します。

広告・PR

ターゲット顧客へリーチするために行う広報活動を言います。大多数を対象とするテレビや新聞への露出だけでなく、プレスリリースやソーシャルメディアの活用など、集団に向けて発信することを指します。広報活動によってタッチポイントの増加やパブリシティなどが期待できます。

広告出稿の場合、リーチできる人数に応じて費用が割高になる傾向があります。またコミュニケーションが企業から顧客へと一方通行になる傾向にあります。SNSやオウンドメディアの運営などの場合、顧客の反応に応じてコンテンツを配信する手間がかかります。

販売促進

販売促進は購入意欲を促進する施策を指します。代表的な例としては割引クーポンや試供品、抽選券などです。認知向上はあまり期待できませんが、プロダクトの利点を体験する機会が増えることが期待されます。

イベント

顧客との交流を行い、プロダクトの価値や認知の向上を計る活動です。展示会やフェアへの出店などを主催あるいは参加することが一般的です。顧客と直接的な接点を持て、認知やイメージ付け、関係性を深められます。集客や準備などが必要となりますが、顧客は特定の目的を持って参加するため質の高いリーチが期待できます。

ダイレクトマーケティング

ダイレクトマーケティングは電話やDM、メルマガなどターゲット顧客に対して行うコミュニケーションです。顧客からレスポンスが得られやすく、直接的に購買を促進できます。受け身にならず自社から顧客にコミュニケーションできますが、営業色の強いコミュニケーションを嫌う顧客がいます。

インタラクティブマーケティング

企業と顧客で行われる双方向のコミュニケーションを指します。例えば顧客の興味関心に最適化して、、おすすめの商品を提案することなどが挙げれます。ユーザーによってコミュニケーション方法や内容が変わるため手間がかかりますが、顧客の反応や趣向に合わせることで高いエンゲージメントが期待できます。

人的販売

訪問営業など人を使った顧客と対面的なコミュニケーションを指します。直接的に製品の魅力を伝えられ、その場で顧客の疑問に応えることができ、信頼関係を築けます。そのため購入プロセスの後期や関係性が重要なB2Bなどで有効です。コミュニケーションを行う人によって、その質がバラつかないよう教育が必要です。

口コミマーケティング

顧客がSNSやクチコミサイト、知人などにプロダクトの評価を共有することを指します。ポジティブな評価は新たな顧客獲得の推進力になりますが、ネガティブな評価は拭い去るのに時間と労力を要します。そのためプロダクトに満足してもらうことや、その魅力が他人に伝えやすいようにするなどの考慮が必要です。

マーケティングの種類についてはこちらも紹介しています。
>>【保存版】37のマーケティング種類まとめ

IMCとは – チャネルが多様化した現代で重要な考え方

IMC(Integrated Marketing Communication)とは、統合型コミュニケーションの意味です。

マーケティングコミュニケーションの問題点とIMCの必要性

これまで少ないチャネルで多くの顧客に訴求することができましたが、SNSの普及などによりコミュニケーションチャネルが多様化しています。

そのためマーケターは顧客やコミュニケーション媒体の特性などを見極め、複数のコミュニケーションチャネルを使う必要があるでしょう。この時、複数のチャネルから発せられるブランドメッセージを管理し、顧客に訴求していくIMCが役立ちます。

[PR]ビシネスニュースアプリ「INFOHUB」をダウンロードしよう

なぜマーケティングコミュニケーションが重要なのか

デジタル社会である現代は、消費者がプロダクトを評価し発信します。このような時代において、消費者から信頼され愛されるプロダクトを提供していくためにはマーケティングコミュニケーションが欠かせません。

整合性があり、顧客が納得するマーケティングコミュニケーション行うことで、市場シェアや売上高、ブランドの向上などに役立ちます。そのためには消費者の視点に立ち、何が顧客にとって重要なのかを考える必要があります。なぜなら消費者が競合と自社のプロダクトを比較した時、特徴と価値を理解していないと購入しないからです。

また、マーケティングコミュニケーションは長期的にも事業へ貢献します。顧客と有効なコミュニケーションツールでつながることで、ユーザーのフィードバックや変化を知れるからです。競争の激しい現代において、これらの情報は競争優位を築く材料になります。また顧客と末永いコミュニケーションをすることで、自社あるいはプロダクトへの愛着や忠誠心を開発することが期待されます。

マーケティングコミュニケーション戦略作成の6つのステップ

マーケティングコミュニケーション戦略は6つのステップで作成できます。手順は以下の通りです。

それぞれについて詳しくご紹介していきます。

1.対象者を特定する

コミュニケーションの内容や方法はターゲットとする顧客によって変わります。そのためマーケティングコミュニケーション戦略の前に顧客理解が欠かせません。

顧客のニーズやライフスタイルを理解することで、メッセージの内容やコミュニケーションする場所や時間帯など、マーケティングコミュニケーションを計画するヒントが得られます。このフェーズでターゲット顧客のニーズと特性を定義することで、顧客にあったコミュニケーション戦略を立てることができます。またこれによりIMC戦略の整合性がとりやすくなります。

ニーズに関してはこちらでも解説しています。
>>ニーズとは?

2.USPの決定

USP(Unique Selling Proposition)は自分たちがもつ独自の強みのことで、マーケティングコミュニケーション戦略の基礎となります。

ブランドのメッセージを明確にし、説得力を持った形で顧客がブランドを認識しやすくなります。USPは分かりやすい言葉で、多くの人に伝わるようにしましょう。またUSPはコミュニケーションするすべての場所、すべてのメッセージに含む必要があります。

3.コミュニケーションミックスの決定

コミュニケーションミックスとはコミュニケーションする場所(手段)の組み合わせです。例えばInstagramの広告やインフルエンサーの活用、コンテンツマーケティングは近年、新たに生まれたチャネルです。

コミュニケーションする場所が多いと良いわけではありません。ターゲット顧客が高齢の方の場合、インターネットで過ごす時間は少ないです。そのためSNSやGoogle Adsなどを利用しても効果は低いでしょう。対象とする顧客に応じて、最適な組み合わせを決定することが大切です。

4.ブランディングの決定

ブランディングは「顧客に自社が何をしているのか」や「顧客にどんなイメージを持ってもらいたいのか」といった、自社の核となるアイデンティティのことを言います。

広く知られていることですがオフラインやオンラインを問わず、顧客とのすべてのタッチポイントに一貫した外観と雰囲気を持たせましょう。代表的な例はホームページや会社案内、名刺などの資料です。企業はすべてのコミュニケーションにおいて、顧客に自社のブランドイメージを訴求していきます。

5.目標の定義

このフェーズでは、戦略に盛り込まれたすべてのコミュニケーションチャネルにおいて売上や認知度の向上などの目標を設定します。

設定された目標は効果測定をし、必要に応じて修正します。そのため定量化された指標を用いることをおすすめします。ただしソーシャルメディアの「いいね!」など、どれだけ事業に貢献したか不明瞭な数値は控えましょう。代表的な数値目標は次の通りです。

  • 閲覧数:各チャネルのビュー数
  • 滞在時間 : チャネルで配信されたコンテンツに費やした時間
  • DL数:コンテンツがダウンロードされた回数

6.戦略の実行と振り返り

これまでの5つのステップで作成したマーケティングコミュニケーションを実行し、修正するフェーズです。戦略に基づいて実行した成果から、必要に応じて修正し再実行しましょう。PDCAを回すことでより顧客と洗練されたコミュニケーションが行えます。

マーケティングコミュニケーションの目的は顧客とのコミュニケーションを通じて、収益の向上やブランドの確立など事業を優位にすることです。そのため事業の利益を軸に振り返る必要があります。また数値化しづらいブランドイメージなどは必要に応じて、アンケート調査などの定性的な分析を行います。

マーケティング戦略の構築プロセスに関してはこちらでも詳しく解説しています。
>>《図解》はじめてのマーケティングプロセス-6つの基本理論と事例を解説

マーケティングコミュニケーション戦略を作るポイント

マーケティングコミュニケーションは、顧客との関係作り欠かすことのできない重要なマーケティング戦略のひとつです。しかしながらコミュニケーションチャネル全般の検討に、苦戦するマーケターがいるのも事実です。

そのためここではマーケティングコミュニケーション戦略を作る上でのポイントをご紹介します。

ブランドイメージの一致

ブランドは顧客が「〇〇といったらA社」となっている状態を目指します。発せられるメッセージや目に触れる資料などとブランドのイメージが一致するよう意識しましょう。

メッセージは専門用語をできるだけ使わず、わかりやすい言葉を使います。また、マーケティング資料は色使いや配置などのデザインを統一することで、視覚や感覚にブランドイメージを与えることができます。

予算の中で最適な選択をする

予算は自社の規模に見合った範囲で設定する必要があります。予算額の設定に用いられる代表的な手法は次の4つです。

  • 企業の余裕ある範囲で予算を設定する方法
  • 売上規模に応じて予算を設定する方法
  • 競合他社の予算額に応じて設定する方法
  • あらかじめ費用対効果を読んで予算を設定する方法

コミュニケーションミックスの選び方

コミュニケーションミックスを検討する際「チャネルが多すぎて、どの媒体を利用すれば良いか分からない」ということがあります。コミュニケーションミックスは「市場」「顧客」「プロダクトのライフサイクル」のポイントを抑えることで、チャネルやその組み合わせを検討しやすくなります。

どんな市場のタイプか

B2BとB2Cでは市場の特性が異なります。それぞれの市場の特徴は以下の通りです。

B2B:広告に注力する傾向にある
B2C:個人的な販売や関係の構築に注力する傾向にある

市場の特性に応じたマーケティングミックスを検討しましょう。

どんな顧客を狙うか

コミュニケーションをする場所や時間に、対象とする顧客がいないと効果が見込めません。どのような顧客をターゲットするかを事前に固めておきましょう。対象の顧客が定まれば、次のようにコミュニケーション方法を検討します。

コミュニケーション方法の策定例


若いターゲット顧客:FacebookやInstagramなどのプラットフォームを利用する

セールスプロモーション:リーチした顧客は販売促進で購入を促す
コンタクトが得られた顧客:パーソナライズしたeメールを送る
広告、オンライン、ソーシャルメディア、PR:製品の認知と顧客の理解に役立つ

プロダクトのライフサイクル

コミュニケーションの方法によって期待される効果が異なります。実はプロダクトライフサイクルによっても効果が変わるため、考慮する必要があります。

プロダクトの導入段階では広告やソーシャルメディア、イベントが最も効果が高いです。次に成長段階ではeメールやオンラインマーケティングが市場シェア推進に効果を発揮します。成熟段階では人的販売が期待され、衰退段階では販売促進が役立ちます。

関連:プロダクトライフサイクルとは>>

マーケティングコミュニケーションの事例を紹介

マーケティングコミュニケーションは顧客とプロダクトをつなぐ役割を持っています。ここでは多種多様な企業と顧客のコミュニケーションの成功事例を紹介します。

YouTube – 「YouTuber」を世に根付かせた施策

2014年YouTubeが実施したキャンペーン「好きなことで生きていく」は記憶に新しいのではないでしょうか。YouTubeはこのキャンペーンで動画配信をするクリエイター「YouTuber」を全面に出し、マーケティングコミュニケーションを行いました。今までなかった「YouTuber」という価値観が多くの人の共感を生み、話題になりました。

得られた成果

Youtubeはこのキャンペーンを通じて、動画視聴の場から動画を投稿するプラットフォームへと進化しました。

  • YouTuberの認知度の向上、新しい価値観の浸透
  • 動画投稿へのハードルが下がり、Youtuberを目指す人がうまれる
  • YouTube内のコンテンツが多くなり、視聴する人や時間が増える

サウスウエスト航空 – 「トランスファレンシー」

2014年サウスウエスト航空は「トランスファレンシー(Transfarency )」呼ばれるマーケティングキャンペーンを行いました。トランスファレンシーとは透明性を意味する造語のことです。

飛行機の料金はわかりづらいものが多いです。サウスウエスト航空は手荷物、フライトの変更、スナックや飲み物などの料金をテレビやラジオ、印刷物、webページなどで分かりやすく顧客に伝えるようにしました。

得られた成果

サウスウエスト航空は認知度と信頼関係、親しみやすいブランドイメージを得ています。

  • フライト代とは別で燃油料金をとらない、#FeesDontFlyキャンペーンで、顧客がサウスウエスト航空を選択する価値を認識
  • オンライン、オフライン問わず一貫したメッセージを継続的に発信
  • TwitterやFacebookでポジティブな投稿が多くなりブランドが浸透

ドミノピザ – 「Any Ware」

宅配ピザで有名なドミノピザは、顧客がより便利に注文できるよう「Any Ware(エニウェア)」キャンペーンを行いました。AnyWareではツイートやスマートテレビ、スマートウォッチなどを使って注文できます。これは顧客の注文や好みを保存するPizza Profilesを利用しています。

得られた成果

ドミノピザは顧客の利便性と愛着を向上することに成功しています。

  • AnyWareのウェブサイトのアクセス数は50万件を超える
  • 2015年AnyWareのテレビキャンペーンは前年同期比10.5%の売上増を記録
  • ドミノピザは全注文の半分をデジタルで行うことに成功

まとめ

本稿ではマーケティングコミュニケーショについてご紹介しました。マーケティングコミュニケーションを活用することで、事業を優位にできます。

具体的なマーケティング戦略の立案や、ターゲット顧客の明確化、ブランドメッセージの整合性などに気を配りながら実践しましょう。これによりビジネスの成功へ近づけます。