マーケティングを進める上で、分析は欠かせません。しかし、色々ある分析手法で自社に何が一番適切なのか、どのように進めればいいのかわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?現在、オンラインだけでなくオフラインのユーザーの行動データが取得可能になっています。様々なデータが取得できる様になることで今後マーケティング分析がより重要になってきます。本稿ではマーケティング分析の代表的な手法の紹介から、分析を行う際の注意点をご紹介します。ぜひご参考にしてください。

12のマーケティング分析手法

マーケティング分析手法には様々なものがあります。ここでは、代表的な12のマーケティング分析手法をご紹介します。

3C分析

3C分析は市場環境を分析する手法です。自社がどのような顧客、どのような競合を相手に戦っていくのかの大枠を分析するのに有効です。3Cとは、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の頭文字から来ています。分析視点としては、下記があります。

顧客(Customer):現在の市場規模はどの程度なのか、どのような顧客がいるのか、どのようなニーズがあるのかなどを分析します。

競合(Competitor):市場にどのような競合がいるのか、シェアはどれくらいなのかなどを分析します。

自社(Company):自社のプロダクトの強みは何なのか、競合との差別化ポイントは何なのかなどを分析します。

3C分析では、進出しようとしている市場が本当に戦っていける可能性があるのかなどを分析するために活用しましょう。分析のステップとしては、顧客(Customer)からはじめ、競合(Comeptitor)、自社(Company)の順番で進めると進めやすいです。

4P分析

4P分析は、マーケティング・ミックスを検討する時に有効な分析です。マーケティング戦略を実行案に落とし込む時に活用します。4Pは、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の4つの視点で施策を考えるためのフレームワークです。

製品(Product):マーケティングの源泉となる製品の戦略です。どのようなサービスを提供するのか、どのような製品名にするのかなど、戦略に従いプロダクトの概要を決めます。

価格(Price):プロダクトをいくらで売るのかを検討する価格戦略です。この際、価格だけでなく売り切り型にするのか、サブスクリプション型にするのかの課金制度も決めます。

流通(Place):どのように顧客にプロダクトを届けるのかを検討する流通戦略です。流通戦略の際に重要なのは、プロダクトのブランドイメージとの相違がないことです。例えば、高級なイメージなのにコンビニで売るといったことは避けましょう。

プロモーション(Promotion):顧客にどのようにプロダクトを認知してもらうのか、どのように関心を持ってもらうのかの施策を検討します。具体的な施策例としては、TVCM、リスティング広告、イベントなどを含みます。

4P分析を行う上でのポイントは、矛盾がないかを確認することです。戦略との矛盾がないか、それぞれの施策間で矛盾がないかを確認することにより、一貫したイメージを消費者に対して提示できます。

5フォース分析

5フォース分析は、市場に参入を検討する時に市場環境、特に外部環境を分析する際に活用するフレームワークです。経済学者マイケル・ポーターにより提唱されました。

「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」の5つの要素が市場に影響するというものです。それぞれの力が強いほど市場の収益性が低いと判断されます。

7S分析

7S分析とは、自社の経営資源を分析するためにマッキンゼーが提唱したフレームワークです。7Sは、ハードの3Sとソフトの4Sに分かれます。

ハードの3Sは、Structure(組織構造)、System(システム)、Strategy(戦略)であり、比較的簡単に変更できるものです。

それに対してソフトの4SはSkill(スキル)、Staff(人材)、Style(スタイル)、Shared Value(共通の価値観)です。これらの要素はShared Valueを中心にそれぞれ相互に連携しあっています。

7Sは、ハードの3Sとソフトの4Sに分かれる

7S分析をおこなうことで、企業内の課題の洗い出しや優先順位の決定など組織改革をどのように進めていけばいいのかなどが明確になります。

STP分析

STP分析は、マーケティング戦略で自社が市場でどのように戦っていくのかを策定するための分析です。STPはSegmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の頭文字からきております。それぞれの内容に関して下記ご紹介します。

Segmentation(セグメンテーション):セグメンテーションとは、市場の細分化です。多様な要素から構成される市場全体を自社プロダクトに適したターゲットを規定するために細分化します。市場は消費者の塊であり、様々なニーズの人がいます。このように多くのニーズから自社のプロダクトに適した市場を細分化することにより、最適なコミュニケーションが可能になります。

Targeting(ターゲティング):セグメンテーションの次のステップはターゲティングです。細分化した市場セグメントから自社のプロダクトのニーズがあるセグメントはどこなのかを規定します。

Positioning(ポジショニング):最後はポジショニングです。規定したターゲットを軸に、自社がどのような価値を提供するのか、どのようなポジショニングをするかを規定します。

このように規定したSTP分析は、その後のマーケティング・ミックスの元となる戦略になります。STP分析をしっかり行うことがマーケティングの肝になります。

SWOT分析

SWOT分析は、内部環境・外部環境を分析する時に有効なフレームワークです。市場環境や外部環境を把握するために活用します。SWOTは、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、外部の脅威(Threat)の頭文字からきています。それぞれをマトリックスで整理することで自社がどのような戦略をとるのかを検討できます。

SWOT分析の図解

例えば、自社の強みと脅威を分析することで差別化戦略が検討できます。このようにSWOT分析は自社の戦略検討のヒントになります。

PEST分析

ビジネスを進める上でミクロだけでなく、マクロの影響も重要です。マクロの状況を把握するために活用するのがPEST分析です。PEST分析は、Politics(政治)、Economics(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の頭文字からきています。

Politics(政治):薬事法などの法規制
Economics(経済):株式市場や経済動向
Society(社会):外出自粛などのライフスタイルや社会動向
Technology(技術):5GやIoTなど技術革新

このように各視点でどのようなことが起きているのかを常に追うことが重要です。

VRIO分析

VRIO分析とは、自社の経営資源を分析し、企業の強みを把握し競争優位性を見極め、効果的な戦略を立案するための分析手法です。VRIO分析では、経営資源をValue(経済価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣可能性)、Organization(組織)の4つの視点から分析します。

VRIO分析の進め方は、Valueから順に自社の経営資源があてはまるのかYes、Noで回答していきます。それにより、自社が「競争劣位、競争均衡、一時的な競争優位、持続的な競争優位」のどれかの状態に当てはまるかを分析出来ます。

VRIO分析の進め方

VRIO分析を行うことで自社のコア・コンピタンスの理解にも有効です。

VSPRO分析

VSPRO分析とは、組織のマネジメントシステムの理想と現実を分析するための手法です。Vision(ビジョン)、Strategy(戦略)、Process(プロセス)、Resorce(資源)、Organization(組織)の頭文字からきています。

それぞれの視点でマネジメントシステムにおける理想と現実を比べることで問題点がどこにあるのか把握します。

 ・Vision(ビジョン):企業のビジョンはどのようなものか?その美容ンは適切か?
 ・Strategy(戦略):戦略がビジョンに沿ったものになっているのか?
 ・Process(プロセス):戦略実行のためのプロセスはどのようなものか?プロセスは戦略にそっているのか?
 ・Resorce(資源):プロセスを実行するためのリソースあるのか?
 ・Organization(組織):戦略実行ができるような組織になっているのか?

このように順に分析していくことで課題がどこにあるのかが明確になり、マネジメントシステムの改善に活用できます。

ファネル分析

ファネル分析とは、プロダクトの購入や会員登録などのコンバージョンまでにユーザーがどのポイントで離脱したのか分析する手法です。顧客の購買行動の理解やインハウスマーケティングの発展に活用します。

コンバージョンに至るまでに徐々にユーザーが絞られていく様子が漏斗の形に似ていることからこのように呼ばれています。

ファネル分析を活用することで、ユーザーがどのアクションポイントでユで大量に離脱しており、どこが改善点なのかを把握することができます。改善点を把握することで、マーケティング施策の改善を行えます。

バリューチェーン分析

バリューチェーンとは、自社のサービスやプロダクトの価値が事業のどの工程で生まれているのかを把握するための分析です。バリューチェーン分析を行うことで、自社の強みを把握することやリソースを効果的に配分することによりコスト削減などに繋がります。

バリューチェーン分析の進め方は、バリューチェーンの中にどのような活動があるのかをまず把握します。バリューチェーンの活動は物流やマーケティングなどプロダクトが顧客に届くまで関係する主活動と人事、会計など主活動を支える支援活動に分かれます。

バリューチェーンの活動が整理できたら、それぞれのコストや強み・弱みを把握します。また、これに合わせて先程合わせたVRIO分析も合わせることでより精度が高い事業戦略を行うことが出来ます。

コア・コンピタンス分析

コアコンピタンス分析とは、ユーザーに提供している価値のうち、競合には真似できない自社の中心的な価値を把握するための分析手法です。強みを分析するSWOT分析とは違い、競合との違いを定量的に把握します。

分析をすすめる上で、まずは調査項目を設定します。調査項目例としては下記があります。

・商品力:開発スピード、プロダクトシェア
・企画力:調査力、プランニング力
・営業力:営業人数、企画提案力
・サポート力:顧客満足度

ここで重要なのは、顧客に提供する価値に関することであるということです。そのため、インナー施策などは含めません。

調査項目を設定できたら、調査対象を決めそれぞれに100点満点で点数付けしていきます。そのうえで、他者と比較して勝っている点が自社の強みとなる可能性があります。このように自社のコア・コンピタンス分析をするための手法です。

アンゾフのマトリクス分析

アンゾフの経営マトリックスとは、事業の成長・拡大戦略を検討する際の分析手法です。市場と商品の2つの軸で既存、新規のマトリックスで整理することで企業の成長戦略がシンプルに整理できるというものです。

それぞれのマスは、市場浸透、新市場開拓、新製品開発、多角化にわかれます。

 ・市場浸透:既存市場で既存製品の売上を伸長させるための戦略
 ・新製品開発:既存顧客に新規製品を提供することで売上を伸ばす戦略
 ・新市場開拓:既存商品で新規顧客開拓することで売上を伸長させる戦略
 ・多角化:新規市場で新商品を狙い、事業の拡大を狙う戦略
アンゾフの経営マトリックス図解

このように、市場と製品を軸に事業拡大を検討するための分析手法です。


マーケティング分析はより重要になる

新たなテクノロジーが開発されることによりユーザーの行動データが取得可能になってきています。例えば、購買データからどこに移動したのかの行動データなどオンラインのデータはもちろん、IoTの普及に伴いオフライン行動までもが取得できます。

しかし、データを収集するだけでは意味がありません。データを収集し、そこから新たな発見点を見出すことが重要です。そのために重要なのがマーケティング分析です。ビッグデータの時代にこそマーケティング分析がより重要になってくるでしょう。

分析を行う際の注意点

最後に分析を行う際の注意点をご紹介します。

どんなデータソースを使うか

まず一点目はどのようなデータソースを使用するかです。データソースには大きく1次情報と2次情報があります。

1次情報とは、「自社独自に収集したデータ」です。1次情報は独自に集める調査などが必要なため収集に時間、コストがかかります。しかし、消費者から直接データを集めるため、鮮度の高い質の高いデータを取得可能です。

2次情報は、「第三者によって収集されたデータ」です。第三者により販売、公開されているため簡単にコストをあまりかけず入手することが可能です。しかし、競合他社も手に入りやすいといったことや第三者視点での分析が行われてしまっており、マーケティング戦略で大きいな違いが見いだせないというデメリットがあります。

効果的なマーケティング分析を行うためには、自社独自の1次情報を収集した上で、2次情報も加えて分析するというバランスを検討しましょう。

課題や仮説を出した上で分析しよう

データを分析を行う上で目的がなく分析を行っても適切な結果には繋がりません。なぜ分析を行うのかの目的や、今抱えている課題は何が原因なのかという仮説など、分析の軸や着地点を明確にすることが重要です。

マーケティングにおいて分析を行うことが目的ではありません。目的や仮説を持った上で分析を始めると、どのようなデータが必要なのかも明確になります。このように分析への負担を減らすこともマーケティングを進める上で重要なことです。

いつでも分析が正しいとは限らない

最後は分析は絶対正解ではないということを認識しておくことです。様々なデータが収集出来るようになり、分析を行うことで、例えば消費者に関して完全に理解したと思われる人もいるかもしれません。

しかし、データは消費者の一部分を表すものでしかありません。データ分析は有効な手段ですが、データ分析では見えない部分があるということを常に認識しておくことがマーケティングを進める上で重要です。

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まとめ

マーケティング分析は、マーケティングだけでなく事業戦略など幅広く活用できます。しかし、分析は万能ではありません。担当者がしっかりなぜ分析を行うのかの目的を理解し、どのような結果を求めているのかを理解していることが重要です。

また、分析は有効ですが、あくまでも一つの視点に過ぎません。

分析を重ね、施策を実施しまたデータを収集するというPDCAを回すことが欠かせません。本稿では様々な分析手法をご紹介しましたが、まずは自社の課題に沿った分析手法を試してみてはいかがでしょうか。