私が初めて社会的通貨を知ったのは、10年前、マーケターとして正式にスタートしたばかりの頃でした。その時に読んだのが、おそらくマーケティングに関する最高の本(今でもこの言葉を信じています)、ジョナ・バーガーの『Contagious』でした。

社会的通貨とは

法定通貨ではないが、ある目的や地域のコミュニティー内などで、法定貨幣と同等の価値あるいは全く異なる価値があるものとして発行され使用される貨幣

Wikipedia

ジョナ・バーガー教授は、物事の流行について10年かけて研究し、その重要な側面の1つとして社会的通貨について言及しています。

多くの場合、私たちは他人の前でいい顔ができるものを共有します。

社会的通貨とは、社会資本の理論に基づいた概念です。

私たちは、つまらない話はシェアしません。なぜなら、つまらないと思われるだけだからです。

もう少し突っ込んで考えると、社会的通貨は今、マーケターが知っているであろう価値観マーケティングへと進化していると言えるでしょう。

価値観マーケティングとは、製品やサービスを販売する際に、顧客の価値観や倫理観に訴える手法です。

近年では、製品中心のマーケティングから、顧客中心のマーケティングへと移り変わっています。企業が顧客に向けてリリースする広告やプロモーションは、その企業の価値観をブランドメッセージの一部として表現するものです。

Oddboxとの出会い

私は、価値観マーケティングに成功しているいくつかのブランドに出会うことができました。

Oddboxはそのうちのひとつで、持続可能な果物と野菜で食品廃棄物に取り組むロンドン初で唯一の企業です。ODDBOXは農家と積極的に連携し、食品廃棄物になりそうな新鮮で、余剰に収穫されてしまった野菜や果物を回収しています。

今回、Oddboxの共同設立者であるEmilie Vanpoperingheさんにお話を伺うことができました。

エミリーさんは、フォーチュン500社(3M社、BT社)に属する世界各国の企業で、15年以上にわたりプロジェクトやチームのマネジメントに携わってきました。

それ以前は、ナイキ財団によって設立された国際NGOで財務・運営部門のディレクターを務め、開発途上国で少女たちの支援活動を行っていました。

それ以前は、フランス、インド、英国の企業で10年近く財務に携わってきました。

そういった多くの素晴らしい物語がそうであるように、彼女のOddboxへの道のりも、シンプルなアイデアから始まりました。

エミリーさんと彼女の共同創設者は、休暇でポルトガルに行き、毎日、地元の市場で買い物をしていました。

「巨大で醜いトマトを買いましたが、これが本当に美味しかったんです」

これをきっかけに、フランスのスーパーマーケット「アンテルマルシェ」の 不恰好な果物キャンペーンや、ヒュー・ファーンリー・ウィッティングストール氏の「廃棄物との戦い」についての記憶がよみがえり、アイデアがひらめいたと言います。


「ポルトガルから帰国後、まず果物のサプライチェーンについて調べたところ、食品廃棄物の多さや、見た目が悪いという理由で、おいしい果物や野菜が畑に放置されたり、廃棄されたりしている事実を知りました」とのこと。


アイデアを形にする

特に、食品廃棄物のような比較的新しい市場では、市場調査が重要です。

「Oddboxを始める前に、業界の現状を把握するために生産者に会いました。英国最大の果物業者の施設を訪問した際、切り口や小さな傷があるという理由で廃棄されてしまった、品質の良いニンジンを見てショックを受けました」

共同設立者たちは、中間業者をカットするために、農家に直接出向きました。

リンゴ農家の人たちに話を聞くと、最近、早霜に見舞われてリンゴの見た目が悪くなり、それを売るのに苦労していることを教えてくれました。

これが、ビジネスを成長させる種となりました。

調査とマーケティングにおいては、自分たちがターゲットとなる市場を想定し、競合他社の分析を行い、洞察を得るためには発売して確かめてみるのが最善の方法だと考えました。

「まずは6週間のトライアルで、20人のお客様を募集しました。そのお客様は、チラシ、Facebookの投稿、友人のネットワークを通じて募集しました。」

エミリーさんは、ビジネスを成長させる上で最も難しいのは、アイデアではなく実行であり、複数の人に責任を持ってもらうことが、成功への一番の近道であると語ります。

「Oddboxのアイデアを思いついたときに最初にしたことは、何十人もの友人や元同僚にメールを送って知らせ、フィードバックをもらい、その後も進捗状況や次のステップを報告しました」と彼女は振り返ります。

「諦めた、とは言いたくなかったので、最初はたくさんの辛いことがありましたが、それを乗り越えられました」。

あなたとあなたのビジネスのグロースと拡大のために、どのように説明しますか?

モデルを賢く選ぶ

ここ数年、株式による資金調達は、企業の成功を測る主な指標となっています。資金調達は追跡が容易で、非常に目につきやすいものです。また、急成長の原動力となり、誰もが爽快な気分になります。

エミリーさんは、外部の資金源から成長のための資金を調達することが、ある企業にとっては正しいことであっても、他の企業にとっては間違ったことかもしれないと指摘します。

「私は、12~18ヶ月ごとにエクイティ投資を募るという業界のルールや、成長のみに焦点を当てることには賛成できません」と述べています。

企業のニーズやビジネスモデルに基づいた、よりバランスのとれたアプローチが必要です。また、成長と収益性を実現するためには、株式による資金調達が唯一ではなく、常に正しい方法でもないことを認識する必要があると指摘しています。

Oddboxはブランドとして、まず人に投資することを重視しました。

 「私たちは、各チームに対する投資がこれまでで最も価値があったと考えています。一人ではできませんでしたし、専門知識だけでなく、さまざまなアイデアや経験を持ち込む必要がありました」

あなたが過去12カ月間に行った重要な投資を1つ挙げるとしたら、それはどんなものでしょうか?そしてその理由は?

[PR]ビシネスニュースアプリ「INFOHUB」をダウンロードしよう

ギャップを埋め、強い価値観を利用する

ソーシャルメディアをビジネスとして使いこなすまでには時間がかかりましたが、ブランドがユニークたり得る価値観に焦点を当て、忠実あ顧客とコミュニケーションを取ることで答えが得られました。

ミレニアル世代とZ世代は、最も積極的で発信力のあるオーディエンスです。彼らはあなたのブランドの支持者です。

Z世代は、あなたの会社が社会問題に取り組んでいる場合、より積極的な購買活動をします。調査[1]によると、Z世代は「社会意識の高い世代」と呼ばれています。

10代の若者が、彼らに影響を与える問題について発言する機会が増えていることにお気づきでしょう。

人々は以前にも増してブランドの価値を考慮するようになり、社会問題に対する意識の高いブランドは今日の市場で大きな成功を収めています。社会的通貨の一形態としてだけでなく、お金の使い方で主張する方法としても。

Oddboxの場合、最初はヴィーガンのインフルエンサー(彼らの顧客の一人)から始まり、彼らのフォロワーがバイラル現象を引き起こしました。。

あなたの会社が重視し、オーディエンスに訴えたい価値観はどんなものでしょうか?

「最近では、当社の価値観に賛同し、Oddboxの普及に貢献してくれるインフルエンサーにOddboxをプレゼントすることで、コミュニティの拡大を図っています」。

同社は、生産者の苦労や食品廃棄物を生み出すさまざまな要因について洞察し、より持続可能なライフスタイルや無駄のない消費を促進することで、コミュニティに価値を提要し、価値観マーケティングを行っています。

「経済的に弱い立場にある人々のために200万食以上の野菜を寄付しました。これは約500トンの二酸化炭素排出量を削減する効果があり、ロンドン-ニューヨーク間の往復航空券5,000回分に相当します。」とエミリーさんは語りました。

このことをブランドのミッションとメッセージの中心に据えることで、Oddboxは群を抜いて存在感を示すことに成功しています。

これは、消費者の意見が、特定のスポンサーによる金銭的な見返りを超えて、ある製品を日常生活のさまざまな場面でシームレスに使うことを明確に証明しています。

このように、顧客の影響力は企業にとって大きな財産であり、ブランドにとっては大きな影響力となるのです。

コンテンツ提供:Fab Giovanetti

マーケティングコンサルタント。Alt Marketing SchoolとCreative Impact Coの創業者。

原文:Why Value-Based Marketing Is the Future of Startups


[1]…Anxiety has overtaken Depression: Generation Z