デロイトの調査[1]によると、顧客中心のビジネスモデルを導入している企業は、このビジネスモデルを導入していない企業に比べて60%の利益率が高いといいます。

顧客中心主義についての記事はたくさんありますが、企業が実践できるガイドはほとんどありません。

そこで、まずは「顧客中心主義」のよくある誤解について紹介します。

二つの顧客”中心”

顧客中心であることは、顧客のニーズや意見に細心の注意を払うことを意味します。

その一方で、ペンシルベニア大学ののピーター・フェーダー教授によると、顧客中心とは、次のようなことであると述べています。

You’re going to be friendly, provide good service and develop new products and services for the special focal customers — the ones who provide a lot of value for you — but not necessarily for the other ones. You need to pick and choose. Some customers deserve special treatment, and if others want to buy from you, that’s great, but they are not going to be treated the same.

“あなたは親身になって、良いサービスを提供し、顧客のために新しい製品やサービスを開発することになります。

あなたに多くの利益をもたらす顧客もいますが、他の顧客がそうであるとは限りません。

開発者や責任者は、その選択する必要があるのです。

一部の顧客は特別扱いに値し、他の顧客もまた購入したいと思うなら、それは素晴らしいことだ。しかし、彼らを平等に扱う必要はないのです” [2]

顧客中心の会社になるためには多くのステップが必要であり、まずは顧客中心の構造を構築するための最初の、そして最も重要なステップから始めていきます。

1. CRMを構築する

Peter Fader氏は、CRMをシンプルに構築し、絶えずそれを調整してくことを推奨しています。

また、プロダクトマネジメントだけでなく、顧客セグメントのマネジメントも行うといいでしょう。

ここでは、トラッキングすべきいくつかの指標を紹介します。

解約率(チャーンレート)
新規顧客を獲得するには、現在の顧客を維持するよりも5倍のコストがかかります。
Bain & CompanyのFrederick Reichheld氏の調査[3]によると、顧客維持率を5%向上させると、利益が25%から95%増加するという。

ネット・プロモーター・スコア…貴社の顧客が貴社の製品やサービスにどれだけ満足しているか。
すべての回答を記録しておけば、あなたに忠実な顧客を見つけつつ、改善すべき点を洗い出すことができます。

顧客生涯価値…顧客中心主義を貫く上で最も重要な指標
どの顧客に投資することが最も意味があるのか、どの顧客が貴社の製品やサービスを長く使ってくれるのかを確認できます。

調査結果・顧客からの苦情・質問・フィードバック…顧客が何を意見し、改善できるかを検討する

顧客セグメント…訪問者を顧客に転換するために顧客をグルーピングし、ナーチャリング(顧客育成)の基盤とする

これらの指標により、どの顧客グループに最も注力すべきかを簡単に認識できるようになります。


2. 最も価値の高い顧客を見つける

ピーター・フェーダーは、顧客中心の組織になるためには、顧客を理解する能力と、価値のある顧客とそうでない顧客を区別する能力が必要であると述べています。

ここでは、価値の高い顧客を探す際に、考慮すべき点をいくつか紹介します。

アライメント…どの顧客のニーズや課題をもっとも解決できるか
反対に、自社のサービスやプロダクトから十分な価値を享受できず、問題解決の役に立てないのはどんな顧客でしょうか?

ロイヤリティ…どの顧客が忠誠心が高く、より長い期間にわたって購入してくれるか

LTV(顧客の生涯価値,CLV)…顧客の生涯価値。一人の顧客が長期間にわたってもたらす価値と、一人の顧客の獲得にかかるコストを考慮し、算出できる

どの顧客が最もニーズを満たし、高い利益をもたらしてくれるでしょうか?

3. 顧客のための製品開発に専念する

CRMを構築し、最も価値の高い顧客にリソースを集中して投下することができれば、広い顧客のために分散的にリソースを投下することなく、彼らのニーズを満たすように施策を展開できます。

LTVの最大化…顧客とそのニーズに焦点を当て、顧客が必要としているものを提供することで、LTVを向上させることができる
製品に焦点を当てている場合、顧客のニーズに焦点を当てていないため、顧客の問題を解決することができず、利益の低下に繋がります。

製品やサービスのアップデートが必要な時期を知る…最も価値の高い顧客の声に耳を傾けることで、次に何をすべきかを「推測」するのではなく、どのような機能やアップデートが必要なのかを確信を持って意思決定することができる

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4. 頻繁にフィードバックを求める

上記で顧客からのフィードバックを記録することについて記載しました。

ここでは、顧客中心の企業であるためにフィードバックがなぜ重要なのかを説明します。

顧客中心の企業であるということは、顧客を戦略の中心に据えるということであり、売上や利用状況の数字ではなく、受け取ったフィードバックに焦点を当てることが大切になってきます。

これがどのように機能するかの例としては、顧客のレビューに大きく依存しているUberがあります。

Uberはモバイルアプリをタップするだけで、ドライバーを0から5つ星まで評価することができ、これによってUberは顧客からの評価が高いドライバーを雇用しておき、ビジネスを成立させています。

フィードバックのループを構築する…顧客はドライバーを評価し、ドライバーは顧客を評価することができる

セグメントごとにフィードバックを分析する…Uberのアンケートは、フィードバックを得たい特定の顧客セグメントに最適化して作られている

各顧客セグメントのパーソナライゼーション…アンケートを送信する際には、必ずパーソナライズ化されたメールを送信する

5. テストと改善を行う

価値の高い顧客がいて、大きな製品アップデートを実施したいが、それが本当に顧客の役に立つかどうかはわからないし、うまくいかないなら多くのリソースを投下したくないと感じている場合は、アジャイルとデザイン思考の方法論を使いましょう。(アイデアを出す→プロトタイプを作る→顧客とにテストする→実装する)

Netflixを例に挙げましょう。

Netflixは顧客に取ってより良いサービスとなるように、絶えず複雑なABテストを行っている

彼らが優れた動画プラットフォームを開発することができたのは、顧客に最高の体験を提供するために、常にA/Bテストを実施しているからです。

継続的な成長を維持するためにフィードバックを取り入れることや、影響力のある作品のテストとモニタリング、人口統計に応じたサムネイルのカスタマイズなど、複雑なA/Bテストを行っているのです。

“テストはローンチの数週間前から開始され、ローンチ当日まで行われます。ローンチ後は、各国のさまざまなデバイスプラットでこれらの作品を分析します。”[4]

そのほか、送金サービスのTransferWiseは顧客を第一に考え、顧客を招待して製品をテストしてもらったり、見込み顧客が何を必要としているかをもっと知ることができるように、「ウィッシュ」機能を実装するという施策を実施し、各チームの成功は、毎回顧客にプラスの影響を与えたかどうかで判断するといいます。

6. 顧客体験を重視する

これは顧客中心の企業として、製品開発以外に注力すべきポイントです。

10人に8人の顧客が、より良い体験のためにより多くのお金を払うことを望んでいるように、これに焦点を当てれば、LTVを大幅に増やすことができます。

IKEAは、家や家具が大好きな顧客に対して「イケアファミリー」というロイヤリティプログラムを作り、限定の割引キャンペーンを行うほか、IKEAを訪問するたびに温かい飲み物を提供したり、イベントやワークショップに招待できるようにしました。

7. パーソナライゼーションの設計

Slackは顧客中心の企業の好例で、最初は口コミをマーケティングに利用し、初日に8,000人が登録しました。

Slackは、すべての顧客のやりとりがマーケティングの機会であると考えています。” – ウェス・ブルメット

カスタマーサポートは人間味を感じてもらえるように設計されており、顧客とコミュニケーションをとる際には、いつも温かくて面白い口調で対応しています。

また、SNSを積極的に利用して、顧客とのエンゲージメントを保ち、ウェブサイトの閲覧数を増やしました。

8. 価値の高い顧客を特集する・役割を担ってもらう

顧客も一人の人間なので、当然重要な存在でありたいと思っており、あなたのブランドやストーリーを形成するために、少しでも尽力してくれるでしょう。

同じような価値のある顧客を集客する…既存顧客(LTVの高い顧客)と似たようなタイプにターゲットすることで、最終的なROI(費用対効果)の向上が期待できます。

また、あなたのプロダクト・サービスがどのように機能するかを紹介する際は、製品を使用した顧客へのインタビューが有効です。

顧客目線が担保されたコンテンツは企業から発信されたコンテンツに比べて信頼性が高く、見込み顧客の大きな検討材料になります。

ウェブサイトだけでなく、動画コンテンツサイトなど他のチャネルでも、常に顧客の声を発信できるといでしょう。

9. 顧客とコミュニケーションを頻繁にとる

顧客が自発的にあなたにコンタクトをとり、サービスやプロダクトについて詳しい情報を知ろうとすることは大切です。

これを行うための最善の方法は、ソーシャルメディア上であなたの顧客や潜在的な顧客とつながり、常に顧客をアクティブな状態にしておくことです。

さらに、ソーシャルメディア上で顧客の友人と共有されるようになると、CPA(顧客獲得単価)の低下も視野に入れることができます。

例えばDiscordは、常に顧客と交流し、ジョークを飛ばし、社会問題になると先駆者として行動する素晴らしい企業です。

顧客からフィードバックを得て、彼らがあなたの製品をどのように使用しているかを調査しているほか、レビューとフィードバックに細かく反応することで、ロイヤリティや満足度の向上に繋げています。

最後に

顧客中心の企業になるには努力と時間がかかりますが、適切な顧客にフォーカスし、顧客を中心に製品やサービスを構築し、顧客体験を改善し、可能な限り顧客と関わり、口コミを最大化し、利益を増加させることができれば、企業にとっても顧客にとっても、大きな利益が得られます。


コンテンツ提供:Andreea Encutescu

Brandenstein社でブランドエクスペリエンスデザイナーとして従事。SaaS系企業のブランド戦略を主に支援している。

原文:9 Steps for Becoming a Customer-Centric Company


[1]…Wealth Management Digitalization changes client advisory more than ever before
[2]…ピーター・フェーダー『The Customer-Centricity Playbook』
[3]…Prescription for cutting costs
[4]…Product Integration Testing at the Speed of Netflix