これからマーケターになりたいという方やすでにマーケターで活躍しており、更に成果をあげたい、新たなプロジェクトを経験したいという方もいらっしゃるかと思います。そのためにマーケティングについて学びたいと思っている方も多いのではないでしょうか。

マーケティングを勉強するときに理論を学んでおくことが有効です。そこで本稿ではマーケティング理論とは何かから、学んでおくべきマーケティング理論、学ぶ際におすすめの本をご紹介します。是非参考にしてください。

マーケティング理論の必要性

そもそもなぜマーケティング理論を学ぶ必要があるのでしょうか。理論とは、現実に起きている事象を分析した上で、事象に共通すること概念を導き出し形成化したものです。理論の特徴には大きく4つがあります。

  • 結果が予測可能になる
  • 事実を説明・解釈する手がかりを得られる
  • 現象を整理できる
  • 仮説を生み出す母体ができる

マーケティングでも理論を理解しておくことにより、無駄な作業や試行錯誤の防止に繋がり、業務の効果効率を上げることができます。


マーケティング理論とは?

マーケティングとは、「売れる(儲かる)ための仕組みを作る」ためのプロセスのことです。マーケティング理論とは、この売れる(儲かる)ための仕組みを作るためのプロセスに関しての理論のことですが、人や組織によって定義がそれぞれあります。

ここでは諸説あるマーケティング理論の諸説をご紹介します。

 関連:マーケティングとは?>>

コトラーの所説

フィリップ・コトラーは、近代マーケティングの父と呼ばれており、さまざまなマーケティング概論提唱してきました。コトラーのマーケティング理論では、「商品やサービスで利益を上げるためには顧客をしぼり、その顧客が求めている価値を提供すること」を基本としています。

マーケティングは、「ニーズに答えて利益を上げること」と定義されており、顧客視点にたって何が求められているのかを明確化することが重要としています。

フェアドーンの所説

マーケティング理論の著名な研究家であるフェアドーンは、マーケティング理論を「生産者から使用者または消費者ヘの財貨およびサービスの流れを支配する政策策定者の諸行為を明らかにするもの」と規定しています。

視点としては、企業の利潤を最大化させるために企業が用いる手段を最適化させることなどにより最適マーケティング・ミックス理論などを提起しています。

ハンセンの所説

ハンセンは、「マーケティングとは、消費者の欲求を発見し、それを製品とサービスの明細書に組み入れる過程であり、そこでより多くの消費者がますます多くの製品とサービスを享受できるように援助する」と定義しています。視点としては、消費者視点を軸に企業のマーケティング問題を解決するものです。

ハワードの所説

ハワードは、マーケティング理論を経営的な戦略と意思決定の志向で分析しています。企業、特にマーケティング担当者の統制可能な要素と統制不可能な要素とを区分したことが評価されています。

マッカーシーの所説

マッカーシーは、アメリカマーケティング協会の解釈に追加して、「マーケティングとは、顧客を満足させ、また企業の目的を達成するために、生産者から消費者または使用者への財貨およびサービスの流れの方向を定める企業活勤の遂行である。」と定義しています。

マッカーシーは、ハワード同様にマーケティング担当者が統制可能な要素を区分し、4Pモデルを提起しました。
関連:
マーケティングの4Pとは?
マーケティングの4Cとは?

コトラーのマーケティング理論の歴史

ここで改めてマーケティング理論の歴史に関してご紹介します。上述したコトラー氏は、1968年に発行した「マーケティング・マネジメント論」から理論をアップデートし、マーケティング1.0−4.0までを提唱しました。

マーケティングトレンドは1950年から変化し続けている

マーケティング1.0は、第2次産業革命頃からのまだものが少ない時代であり、コストを安くし大量生産を行う製品中心のマーケティングです。続いて、マーケティング2.0はオイルショック頃といわれており、物が溢れてきた結果、製品の差別化など消費者が求める価値など消費者中心のマーケティングが展開されました。

その後、インターネットの登場により消費者との接点が大きく変わりました。顧客と企業との双方向のコミュニケーションが可能になったり、プロダクトの差別化が難しくなりました。

その結果、プロダクトの機能ではなく、社会にどのように貢献するのかなどやビジョンが重要視されています。これがマーケティング3.0の時代です。
関連:【マーケティング3.0】価値中心の時代の実態と、知っておきたい10戒律>>

今はマーケティング4.0の時代と言われており、自己実現の時代と言われています。プロダクトそのものではなく、プロダクトを持っている自分がどのように見えるのかなどを重視する時代と言われています。そのために顧客との横のつながりを持ったり、カルチャーの発信などが重要になってきています。

マーケティングの歴史やマーケティング4.0について詳しく知りたい方はこちらもぜひ読んでみてください。関連:コトラーのマーケティング4.0とは?最新フレームワーク5Aから事例まで解説>>

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【基礎】戦略推進に役立つマーケティング理論7つ

それでは具体的にマーケティングに役立つ基礎的理論7つをご紹介します。

 

PEST分析

PEST分析とは、外部環境分析のフレームワークの一つです。Politics(政治的要因)・Economics(経済的要因)・Society(社会的要因)・Technology(技術的要因)の頭文字から来ており、それぞれの視点で環境を分析する事により戦略検討に活用します。

PEST分析の詳しい進め方などに関してはこちらの記事を御覧ください。
関連:PEST分析とは?

3C分析

3C分析は、自社含めた内部環境を分析するためのフレームワークです。Customer(顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の3つの視点で分析を行います。3点から分析することで自社の優位性やチャンスなどを発掘し、事業を成功させる要因(KFS)を発見します。

3C分析の詳細に関してはこちらをご覧ください。
関連:3C分析とは?

SWOT分析

SWOT分析とは、内部や外部環境分析をするためのフレームワークです。Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの点から分析することにより、自社の市場機会や課題を洗い出します。

SWOT分析を行うときのテンプレートなどを掲載しておりますのでこちらの記事も御覧ください。
関連:【テンプレート付き】SWOT分析とは?

STP分析

STP分析はプロダクトが対象とする顧客をクリアにする役割を持っています。STP分析は全てのマーケターに必要なフレームワークです。

STPとは「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」の略です。各要素からプロダクトに最適な顧客を洗い出し、競合と比較してどのようなマーケティング戦略を行えばいいのかがわかります。

STP分析の進め方や事例などをご紹介します。
関連:
セグメンテーションとは?>>
ターゲティングとは?>>
ポジショニングとは?>>

マーケティングミックス-4P分析

4P分析はマーケティング・ミックスに検討するフレームワークです。Product(製品戦略)、Price(価格戦略)、Place(流通戦略)、Promotion(プロモーション戦略)の4つの視点で施策を検討するフレームワークです。

4P分析について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

マーケティングミックス-4C分析

4C分析は、4P分析同様のマーケティングミックスを検討するフレームワークです。4P分析と大きな違いは、4P分析が売り手目線を中心に施策を考えるのに対し、4C分析は買い手目線、顧客からの視点を中心に施策を検討します。

Custmor Value(顧客にとっての価値)、Customer Cost(顧客にとっての費用)、Convenience(顧客にとっての利便性)、Communication(顧客とのコミュニケーション)の4つの視点から施策を検討します。

4C分析について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

PDCA

PDCAとは、戦略の実行から検証を行い、戦略の改善を行うためのフレームワークです。「計画(Plan)」「行動(Do)」「検討(Check)」「実行(Action)」の4つのステップを繰り返すことで戦略を改善を目指します。

【基礎から応用まで】知っておくと視野が広がるマーケティング理論

続いて、知っておくことにより視野が広がるマーケティング理論6つをご紹介します。

イノベーター理論

イノベーター理論は、企業が商品を導入する際のマーケティング理論です。消費者は、イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティー、レイトマージョリティ、ラガードの5つにわけ、市場に商品やサービスが普及するまでの経過を分析します。
関連:イノベーター理論は消費者心理の解像度を上げるきっかけに>>

キャズム理論

キャズム理論は、イノベーター理論のアーリーアダプター、アーリーマジョリティーに移行する際の大きな障害のことを指します。市場への普及を目指すためには、この大きな障害=キャズムを超えるための施策を実施する必要があります。

サイバネティクス理論

サイバネティクス理論は、制御工学と通信工学を融合して発展したものです。コンピューター・テクノロジーや航空宇宙学に影響を与えており、何度も結果をフィードバックし、企業の方針を見直すことで最終的にゴールにたどり着くというものです。

サイコ・サイバネティクス理論

サイコ・サイバネティクス理論は、上記サイバネティクス理論が応用された理論で、人間は目標を設定することで、潜在意識が無意識に達成に向けて行動するというものです。

ハフ理論

ハフ理論は、流通業の売上予測などに使えるモデルであり、売り場面積や人口統計などの情報を入力することで売上を予測するものです。

ジョブ理論

ジョブ理論は、顧客のニーズを論理的に把握するために有効な理論です。顧客がサービスや商品を利用するときには、必ず成し遂げたい目的があり、それをジョブと位置づけることでニーズを把握することで戦略を規定するためのヒントを得ます。

組織・リーダーシップの3つの理論

マーケティングといっても施策の実行などはマーケティングの部署だけで完結するものではありません。例えば、営業やエンジニアなどの開発部門との様々な部門やチームなどと組んで進行する必要があります。

そのためにも組織・リーダーシップ・マネジメントについても知っておくことがおすすめです。ここからは組織・リーダシップの3つの理論をご紹介します。

おすすめの組織・リーダシップの3つの理論

PM理論
分業理論
コンセプト理論

PM理論

PM理論とは、リーダーの行動理論の一つであり、Performance(目標達成機能)、Maintainace(集団維持機能)の2軸で整理します。Performanceは、目標設定や計画立案、指示、叱咤などにより成績や生産性を高める能力です。

一方、Maintenanceは、集団の人間関係を良好に築くことでチームを強化することを目指す能力です。それぞれ能力の強弱でリーダシップを分類し、行動規範を整理します。

分業理論

分業理論は、組織を機能ごとのユニットに分けていくことで業務の効率化、生産性の工場を目指す考え方です。

コンセプト理論

コンセプト理論とは、リーダーシップのあり方が企業や外部環境などの状況に応じて違うということを前提にパターンによるリーダーシップを提起した理論です。コンセプト理論には、カリスマ型・変革型・サーヴァント型・EQ型・ファシリテーション型などがあります。

経営戦略型の5つの理論

マーケティングを検討する際に、経営的な視点を持っておくことも重要です。顧客を喜ばせるために人・モノ・カネ・場所・時間がどのように使われるのかなども含めて、情報を管掌することが重要です。そのためにも経営的な視点を学んでおくことは有効です。

5つの経営資源

5つの経営資源とは、自社・他社・業界の資源状況を分析するためのフレームワークです。人・金・モノ・情報・時間の5つの視点で資源の現状を把握することで、適切な資源を把握することが求められています。

SECIモデル

SECIモデルとは、「共同化(Socialization)」「表出化(Externalization)」「連結化(Combination)」「内面化(Internalization)」という4つのステップで知識を創造するためのフレームワークです。個人のノウハウを全体で共有する際などに有効です。

リソース・ベースド・ビュー

リソース・ベースド・ビューは、企業の内部経営資源を分析し経営戦略を検討するためのフレームワークです。分析の視点には、Value(経営価値)、Rarity(希少性)、In-imitatibly(模倣困難性)、Organization(組織)の4つの視点するVRIOなどがあります。

SCPモデル

SCPモデルとは、ビジネスモデルを分析するための理論の一つで、産業構造が業績に大きく影響を与えるという考えの理論です。産業構造(Structure)が事業活動(Conduct)に影響を与え、それが最終的に業績(Performance)に影響を与えるというモデルを整理したものです。

そのため、経営戦略として魅力的な産業構造を見つけることが重要という考えです。

プロダクト・ライフサイクル

プロダクト・ライフサイクルとは、製品・サービスの成長パターンを整理した考え方です。製品は導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つのステージにわかれ、それにあわせた施策を検討するという考え方です。
関連:プロダクトライフサイクルとは>>

マーケティングの理論の学習におすすめ書籍4冊

具体的にマーケティング理論を学べるおすすめの書籍をご紹介します。マーケティング業界はスピード感が早く、トレンドにあわせて常に新刊が出ています。

しかし、常に新しい情報を点で吸収するのではなく、伝統的な理論はまずは学んだ上で新たな情報を学ぶことを推奨します。そこで今回は伝統的な理論を学べる3つの本をご紹介します。

もっと多くの書籍を知りたい方はこちらの記事もおすすめです。
関連:マーケティングを勉強する書籍&サービスと方法まとめ>>

マーケティング戦略 第5版 (有斐閣アルマ)

『マーケティング戦略』は、伝統の戦略から最新の事例も含む最新の戦略論まで幅広くマーケティング戦略がカバーされている著書です。伝統的な戦略論だけでなく、最新のマーケティング戦略まで学ぶのに有効な本です。

[改訂4版]グロービスMBAマーケティング

『グロービスMBAマーケティング』は、グロービス経営大学院のマーケティングの参考書であり、体系的に伝統的なマーケティング戦略がまとめてあります。理論はマーケティング戦略で学び、今日的なフレームワークやケーススタディはグロービスMBAマーケティングで学ぶという分担がおすすめです。

グロービスMBA集中講義 [実況]マーケティング教室

マーケティングは、必要とされ始めたのがつい100−200年前ということもあり、他の学問と比べると圧倒的に歴史が浅いのです。マーケティングの歴史を時系列で学び、理解しておくことはとても重要です。

新訳 ハイパワー・マーケティング

『ハイパワー・マーケティング』は全米でマーケティング・バイブルともいわれている名著です。現在増えているSNSマーケティングやウェブマーケティングの理論などを学ぶのにも有効です。

マーケティング理論を実際に活用するには?3つのマインドセット

それでは、最後にマーケティング理論を活用するためのマインドセットをご紹介します。

しのごの言わず実践してみること

ご紹介したような理論や経営戦略、ビジネスモデルなどは本を読めば一日で知識を得ることが出来ます。しかし、知識を得ているだけでは実践に活用できません。

物事を抽象的に整理するのは学術的な視点であり、実際に実践として成果を出すためには、理論を実践しながら再現することが重要です。そのためにも冒頭でご紹介したような戦略フローから実践してみることがおすすめです。もし、実践の環境がなければ自分で探してみる姿勢も重要になります。

「目的」的に取り組むこと

2つ目の視点は「目的」的に取り組むことです。理論を学ぶことや、理論の実践に集中するあまり、目的がわからなくなり効果につながらないかもしれません。

そもそもなんでマーケティングを取り込まなきゃいけないのか、マーケティングを行うことで何を実現したいのかを見失わないようにしましょう。もし、目的がわからない場合はイシュードリブンという発想を持つことがおすすめです。

イシュードリブンとは?

イシュードリブンとは、問題の本質的な課題を捉えた上でそれを元にして意思決定をすることです。常に問題の本質的な課題は何なのか、問題へのインパクトの大小などを軸に課題を見つけ、それに即した意思決定を行うことです。

常に新しい情報をキャッチアップすること

最後は常に新しい情報をキャッチアップし続けることです。ご紹介したようにマーケティングはスピードが早く、常に新しいテクノロジーや理論、新たなメディアやトレンドが変わります。そのためにも常に新しい情報をキャッチしながら最適な戦略を検討することが有効です。

Infohubのニュースアプリでは、国内・海外含めて最新情報を常にキャッチできます。一度ぜひ使ってみてください。

まとめ

いかがでしたか。マーケティング理論を理解することでマーケティングの基本を把握でき、また戦略を検討し、より効果の高い戦略立案が可能です。今回は基礎的な理論をご紹介しましたが、もしほかのフレームワークも興味ある方は是非こちらの記事も御覧ください。
関連:マーケティングフレームワークまとめ-戦略作成・分析に役立つ>>