マーケティング戦略の中でターゲティングはとても重要です。プロダクトやサービスがいくら良くても、ターゲティングを間違えるとビジネスの成長曲線は鈍化します。本稿では、ターゲティングのやり方、ターゲティングを実施するときのポイントが知りたいという方に向けて、ターゲティングの基本からターゲティングの成功事例を紹介します。
この記事のまとめ
ターゲティングとは、市場の中から狙う顧客を設定することです。ターゲティングを行うことで、限りある資源で利益の最大化をすることを狙います。ターゲティングは、STP分析の一部であり、セグメンテーションの後に行うステップです。
ターゲティングを行うときの考えるポイントは下記の4つです。
・LTVを高める軸
・ROI(費用対効果)を高める軸
・支配戦略を考慮する軸
・環境要因・参入障壁を考慮する軸
また、効果的なターゲティングを行うときのフレームワークが6Rです。
・有効な市場規模(Realistic Scale) ・競合状況(Rival) ・成長性(Rate of Growth) ・波及効果(Ripple Effect) ・到達可能性(Reach) ・測定可能性(Response)
ターゲティングを行うときの注意点は、ターゲットを広く設定しすぎないことです。ターゲットを広く設定しすぎると、施策の精度が低くなったり、ブランドのメッセージが伝わらないという問題が起きます。
ターゲティングとは?
ターゲティングとは、市場の中から自社が狙う顧客を設定することで効率的なマーケティングを行うことです。全方位に資源を投資するのではなく、限りある資源をどこに投資するのかを決めることで、利益の最大化を狙うものです。
なぜ、マーケティングではターゲティングが重要なのか?
日本では第2次世界対戦以降のバブル時代まで、大量生産・大量消費の時代とも呼ばれ、商品を適正な価格で提供すれば売れていました。
そのため、マーケティングもターゲットを絞らないマス・マーケティングが主流でした。しかし、インターネットやSNSの普及に伴い、消費者の価値観が多様化そこで重要と言われたのがターゲティングです。
ターゲティングの設定は、STP分析を行うタイミングでする
ターゲティングはSTP分析の一部です。STP分析とは、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングという自社が市場でどのように戦っていくのかを設定するフレームワークです。
セグメンテーション
セグメンテーションとは、性・年齢やライフスタイルなど顧客の性質により市場を細分化することです。セグメンテーションはマーケティング戦略に大きく影響するため慎重に行う必要があります。
ターゲティング
セグメンテーションで細分化した市場の中から、どの層をターゲットとして狙っていくのを決めるのがターゲティングです。市場規模や競合状況などを元に自社にとって最も適切な市場を選びます。
ポジショニング
ポジショニングとは、ターゲティングした市場の中で自社の立ち位置を明確にすることです。競合の立ち位置や自社の強みなどを検討した上で行います。よくある手法としては、縦軸横軸を設定して競合含めたマッピングを行うというものです。
ターゲティング設定の軸
ご紹介したように、ターゲティングは絞り込むことで資源を集中させることが出来ます。その際、どのようにターゲティングを絞り込むべきなのでしょうか。
LTVを高める軸
1つ目の軸は、顧客のLTVを重視する方法です。ターゲットを規定すると、販売機会が減ると考える人もいるかと思います。しかし、売上はターゲットリーチだけでなく、トライアル購入、リピート購入があったうえで成立します。
広く浅くターゲットを狙い、トライアル購入を促進するのではなく、狭く深くターゲットを狙い、リピート購入を促進するなど顧客のLTVを高めることで売上を狙うという方法もあります。
ROIを高める軸
2つ目の軸は、ROIを高められるかということです。
マーケティングの目的は利益を上げることです。利益を上げるためには、売上を上げながら、コストを下げることが必要になります。
つまり、施策の効果を最大化ということと、コストの最小化という効率化の両方の側面を検討することです。
ターゲットを規定する上でも、少ない資源で最も利益をあげられるのかが一つのポイントになります。例えば、長期的にファンになってくれそうな顧客を選ぶなどは効果的な選択肢と言えるでしょう。
支配戦略を考慮する軸
3つ目の軸は支配戦略が取れるのか否かです。
どのような市場であったとしても競合は存在します。そこで注意すべきなのは、例えば資金のある大手競合と同じ、「20代男性」という顧客層を狙っていた場合、マーケティング予算の関係上、負けてしまいビジネスの勝負にならないかもしれません。
そこで、ターゲティングを「20代 男性 目標がダイエット」と更に絞り込むことで、その顧客に対して最も予算を費やすことができ、市場支配を有利に進めることが期待できます。
競合の立ち位置も含めて検討し、自社が有利に立てることもターゲティングを行う上で重要な視点です。
環境要因・参入障壁を考慮する軸
最後は環境要因や参入障壁を考慮することです。
例えば、環境要因としては、ターゲティング候補となるセグメントの政治的環境、経済的環境、社会的環境、技術的環境など各環境要因の観点を考慮する必要があります。
また、参入に必要な資金等の障壁などの参入障壁も確認することも重要になります。
効果的なターゲティングを設定するための「6R」
効果的なターゲティングを設定するためのチェックポイントとなるのが「6R」というフレームワークです。6Rは、Realistic Scale・Rival・Rate of Growth・Ripple Effect・Reach・Responseの6つの頭文字から構成されます。
有効な市場規模(Realistic Scale):十分な市場規模があること
どれだけプロダクトが良質でターゲットが理想的でも、市場規模が十分でなければ売上がたちません。事業の維持に十分な利益を上がられるかを確認しましょう。
競合状況(Rival):強い競合ブランドが存在しないか
市場において強い競合がいるとそれだけマーケティングは難しくなります。大手などの強い競合がいないかを確認しましょう。
競合分析に有効なのが3C分析です。詳しく知りたい方はこちらもお読みください。
成長性(Rate of Growth):これから成長の見込めるマーケットか
市場規模が現在小さくても、今後大きくなる可能性があります。例えば、日本ではシニア市場、共働き市場などが今後大きく成長すると思われます。将来の市場成長性も意識しましょう。
波及効果(Ripple Effect):口コミによる波及が見込めるターゲットか
ターゲティングを行う際に、波及効果も見込みましょう。
波及効果がある顧客に利用してもらうと、その後自社でマーケティングを行わなくても口コミなどで波及し商品が広がっていく可能性があります。
到達可能性(Reach):チャネルやメディアを通じて到達可能か
いくら市場が魅力的で最適な顧客だったとしても、コミュニケーションやリーチが出来なければ意味がありません。
測定可能性(Response):アクションに対する効果が測定可能か
最後は測定可能性です。マーケティングは一回でうまく結果が出ることが少ないです。結果につなげるためには、常に施策を見直し、調節する必要があります。
施策を実施したらどれくらいの効果があったのか、顧客のリアクションをトラッキングできる環境があるかを確しましょう。
よくあるターゲティングのミス-ターゲットが広すぎる
ターゲティングでよくあるミスは、ターゲットをオールターゲットと設定したり、「10代」など広すぎるターゲットに設定したりすることです。これらは、ROIが悪くなるということに繋がります。
ターゲットが広すぎることを回避すべき理由
例えば、オールターゲットと設定してしまうと、組織の中で狙っているターゲット像が共有しづらくなり、部署ごとに行う施策がまとまりがなくなってしまうということがあります。
その結果、狙っている結果につながらなかったり、ブランドイメージもバラバラのものになってしまうという問題が発生してしまい、最終的にROIが悪くなってしまいます。
そのため、ターゲットを明確に絞ることを意識しましょう。
ターゲティングの3つの成功事例
最後にターゲティングの成功事例をご紹介します。
スターバックス
現在誰でも利用するようになったスターバックスですが、日本進出のタイミングでは都市圏のビジネスマンをターゲットとしていました。
スターバックス進出前、ビジネスマンがコーヒーを読みながら、調べごとや考え事をゆっくりできる場所といえば、ホテルのラウンジでした。
しかし、ホテルのラウンジは値段が高く、日常で利用するにはハードルが高かったのです。また、コーヒーが安く飲めるフードコードではゆっくり出来ないという難点がありました。
そこでスターバックスはフードコートのように騒がしくなく、ゆっくり過ごせるお店とサードプレイスというコンセプトで、ビジネスマン向けにコミュニケーションすることで成功を収めました。
リクナビ(リクルート)
リクナビを利用したことがある方も多いかと思います。リクナビはリクルートが提供する就職支援サイトです。就活生と企業というターゲットをつなげるプラットフォームとなることで大きく成功しました。
企業のことを調べたいと思う学生をターゲットにすることで、今までにない市場を創出したことが成功の要因です。
すき家
最後の例はすき家です。牛丼といえば、吉野家や松屋ですが、すき家はターゲットを他の競合と差別化することで大きく成功した事例です。
牛丼といえば、男性の食べ物というイメージが強いと思いと思います。このようなイメージに合わせ、吉野家や松屋は時間がないブルーワーカーやビジネスマンをターゲットとし、都心の駅近の立地での出店やガッツリ食べれるメニューなどを展開していました。
しかし、すき家は今までのイメージの差別化を狙うために、ターゲットを「郊外のファミリー層」と設定しました。この設定に合わせたマーケティング施策が成功することになります。
例えば、出店計画では地代が安い郊外で店舗数を増やし、競合と比べても大幅に店舗数を増やすことでブランド認知度を高めました。
また、TVCMでファミリーで楽しめるというイメージを展開するとともに、女性向けのメニューやおもちゃ付き子供向けメニューなど、家族で訪れても楽しめる環境作りに成功しています。
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