マーケティングに興味がある、なんとなく知っているけどちゃんと説明できないという方も多いかと思います。実は、マーケティングの定義は専門家や団体でも様々あります。本稿では、マーケティングとはなにか、マーケティングの歴史、代表的なマーケティングの手法や最新のトレンドまで一挙ご紹介します。ぜひご参考にしてください。
マーケティングとは「儲かる仕組みを作る」こと
最初にマーケティングとは、何なのかの定義をご紹介します。マーケティングとは、調査や広告宣伝という風に認識している方も多いかと思います。しかし、定義を理解することで、マーケティング業務の範囲の理解などにつながります。マーケティング定義をしっかり理解することをおすすめします。
専門家や団体の間でも定義は様々
実はマーケティングの定義は決まった一つのものがあるわけではありません。専門家や各団体によって定義は様々なのです。ここで代表的な定義をご紹介します。
共通して言えること
このように各団体や専門家によってマーケティングの定義は異なります。しかし、全ての定義に共通して言えることは、マーケティングとは、「売れる(儲かる)仕組みを作る」ためのプロセスということです。
決してなにか一つの要素だけではなく、市場調査・商品開発・流通・広告宣伝など様々な要素を組み合わせて、お客様のニーズにあったプロダクトを提供することで利益を上げるための仕組みを作り上げることがマーケティングです。
スマホの普及などに伴い様々な手法も注目されてきていますが、どの手法も「売れる(儲かる)仕組みを作る」ための手法ということには変わりありません。
マーケティングの歴史とトレンド
マーケティングとは「売れる(儲かる)仕組みを作る」とご紹介しましたが、市場環境が変化することにより、仕組みも大きく変化します。マーケティングがどのように変化していったのかをマーケティングの権威、フィリップ・コトラーの定義したマーケティングトレンドとあわせてご紹介します。
マーケティング1.0
マーケティングの歴史がはじまったのは、1950年代の第2次産業革命頃と言われています。大量生産・大量消費の時代ともいわれており、生産した分だけ売れる時代でした。企業はコストを抑えて良い製品を作れば売れることが成立していたため、製品中心の時代と言われています。
マーケティング2.0
1970年代には、経済発展が進む事によりだんだんモノが溢れ、製品の機能だけでは売れなくなってきました。さらに同時期に、オイルショックが起きたことにより、物価が高騰し経済が停滞したことで消費者の需要がさらに落ち込みました。
その結果、限られた需要をどのように獲得するのか、企業が自ら進んで、消費者がどのようなものを求めているのか、どのようなニーズがあるのかを考えはじめ、消費者中心の時代に移行しました。
マーケティング3.0
1990年頃、第3次産業革命ともいわれインターネットが登場したことにより、マーケティングの領域も拡大することになります。今までは企業からの一方通行のコミュニケーションが主流でした。
しかし、インターネットの登場により、口コミやレビューなど消費者同士の情報共有が可能になったり、消費者から企業に向けてコミュニケーションが取れるようになりました。
また、先進国ではプロダクトの性能やサービスが優れていることは当たり前となり、プロダクトによって得られるバリューはなにか、企業自体にどのようなビジョンがあるのかなどが重視されはじめ、マーケティングの価値中心の時代となりました。
マーケティング4.0
現在はマーケティング4.0の時代といわれており、2010年頃SNSの登場などがきっかけと言われています。マーケティング4.0は、自己実現の時代と言われています。
自己実現とは、マズローの欲求5段階説に由来しています。消費者が物質的欲求、精神的欲求が満たされはじめた結果、消費者が現在求めているのは自己実現と言われています。商品の機能や価値だけでなく、商品を使っていることによって抱くイメージなどを重視して商品を選ぶようになっていくのです。
例えば、クリエイティブに見られたいという意識のもとMacを購入したり、クールなチャレンジングなイメージということでレッドブルを購入したり、価格や性能ではなく、その商品を使っている自分がどのようなイメージなるのかを重視するなど。その結果、企業がどのように消費者の求めている世界観を提供するかが重要になっています。
今注目されているマーケティング手法
個人それぞれの価値観が重要になっている今、欠かせなくなってきているのがデジタルの存在です。
デジタルにより様々なデータが収集できるようになった結果、購入履歴、アクセス履歴などを元にしたパーソナライゼーションが可能になってきています。現在注目されているのが、そのようなパーソナライゼーションを可能とする、AIや機械学習を活用したマーケティング手法です。
また、今までは企業側からのコミュニケーションがメインでした。しかし、現在の消費者は広告など一方的な情報に嫌気がさしてきた部分もあり、従来ほどの効果が出なくなってきました。
その結果、コンテンツマーケティングと呼ばれるようなホームページなどに価値ある情報を提供すること顧客になりそうな消費者から訪問してもらう自発的なアプローチを促進するマーケティング手法も注目されています。
どのようにしてマーケティングを行うのか
マーケティングの定義、マーケティングの歴史をご紹介してきましたが、ここから具体的にマーケティングを進行していくプロセスをご説明します。
1.市場の調査とターゲットの策定・理解
マーケティング活動の第一ステップは市場環境を理解することです。狙おうとしている市場が、どれくらいの市場規模なのか、どのような競合がいるのか、ターゲットの特徴はどのようなものなのかなどを把握します。PEST分析、3C分析、SWOT分析など、市場を把握するのに有効なフレームワークがあります。
市場規模や競合を把握するためには、統計データやインターネットなどでリサーチを行います。また、消費者調査などで、どのような層にニーズがあるのか、その層がどのような特徴があるのか理解しターゲットを策定します。
2.仮説提唱・マーケティング施策の実行
市場が把握でき、狙うターゲットが策定できたら、具体的な戦略仮説を策定します。どのようなプロダクトにするのか、どこで売るのか、どのようなプロモーションを行うのか、いくらで売るのかなどを規定します。
戦略仮説を規定できたら、次は施策の実行です。例えば、広告を出稿する、キャンペーンを実施するなど仮説で検証した施策を実行します。
3.効果検証・改善
施策を実行したら、そこで終わりではありません。施策がどのような結果になったのか、効果検証を行う事が重要です。想定した目標に達しているのか、費用対効果はでているのかなどを検証し、改善を行い次回の施策につなげます。一度で結果が出ることはまれです。常にPDCAを回していくことでより効果的なマーケティング施策を行いましょう。
マーケティング活動の主な種類
マーケティング活動の大きな流れをご紹介しましたが、ここで具体的な活動をご紹介します。
市場調査(マーケティング・リサーチ)
プロダクトを販売する上で、市場、消費者を把握するために行うのが、市場調査(マーケティング・リサーチ)です。手法としては、政府や大学など公的機関が調査・公表している統計データの調査やアンケート調査などの定量調査、ターゲットになりうる消費者を集めたグループインタビューなどの定性調査などがあります。
セールスプロモーション
セールスプロモーションとは、プロダクトの認知促進や販売促進を目的とした広告宣伝活動などを指します。テレビやラジオなどのマスメディアを活用したものからWEB広告やDM、イベントなど様々な種類があります。ここで代表的な手法をご紹介します。
マスマーケティング
幅広いターゲットにリーチできる媒体として、テレビ・ラジオ・新・雑誌という4マスメディアを活用する手法です。認知拡大などに大きく寄与します。
WEBマーケティング
バナー広告、リスティング広告、メールなどインターネットを活用した手法を指します。大きな特徴として3点あります。1点目は、消費者の様々なデータが収集できるため、消費者のデモグラフィックや趣向にあわせてターゲティングが出来ます。
2点目は、広告の効果がデータとして全て収集出来るため、マスマーケティングに比べて、クリック数などをはじめ、CPAやLTVなど各施策の効果検証が容易に出来る点です。
3点目は、少額からの投資で運用できることです。このような特徴から現在WEBマーケティングは、どの企業においても必須の手法になってきています。
セールスプロモーション広告
セールスプロモーション広告とは、マスマーケティング・WEBマーケティングには当てはまらない手法をさします。例えば、バスラッピングや屋外広告などのOOHやDM広告、フリーペーパー、イベントなどが含まれます。
マーケティングも進化している-今注目の手法-
技術の発展などに伴い、マーケティングの手法も発展しています。現在、特に注目されている手法をご紹介します。
インフルエンサーマーケティング
SNSが普及したことより、個人それぞれがマスメディアのような影響力を持つように、この、影響力が強い個人にプロダクトをPRしてもらう手法がインフルエンサーマーケティングです。具体的な方法として、SNS上で投稿してもらったり、YouTubeでレビューを上げてもらうなどがあります。
MA(マーケティングオートメーション)
マーケティングオートメーションとは、今まで人力で行っていた顧客開拓の仕組みをツールなど用いて、自動化・効率化することです。例えば、潜在顧客の創出、顧客との関係性強化などを行います。
オムニチャネル
今まではECサイトの顧客とリアルの顧客は別々の顧客として認識されていました。オムニチャネルとは、オンライン上とオフライン上を同一顧客と捉え、スマホからテレビ、店頭までをシームレスにつなげていき、顧客体験向上を目指します。
オムニチャネルの主な事例
オムニチャネルの代表例は、アメリカの百貨店Macy’sです。オムニチャネルが注目を浴びたのも、2011年にMacy’s のCEO自らが「オムニチャネル」宣言を行ったからとも言われています。
そのMacy’sのオムニチャネル戦略の一部がモバイルチェックアウトです。専用アプリ内で、商品のスキャン、決済までを可能にしました。店頭を出る際はアプリを読み込み、セキュリティータグを外してもらうだけです。レジ待ちやPOS決済などをなくし、ユーザーの利便性を高める体験を提供しています。
ビッグデータ
現在IoTなどが普及してきたことにより、様々なデータが収集可能になっています。従来のデータベースや調査の構造化されておらず、保管や解析が難しい非構造化データ群をさします。ビッグデータを解析することにより今までわからなかったようなビールとオムツが一緒に購入されているというような事実がわかるようになってきています。
ビッグデータマーケティングの主な事例
ビッグデータマーケティングで成功を収めている事例がJALです。JALは2億ほどのWEBアクセスログ分析することにより、One to One マーケティングを実現しました。
例えば、JALのサイト上で航空券とホテルを一緒に予約する人は限られています。分析によって予約をする顧客層を抽出し、その顧客層に対してのみレコメンドを出したところ、大幅な予約が増えました。
また、それ以外に外部サイトで調べた旅行先の情報を優先して表示するなどデータを分析することで顧客ごとの対応を行い業績を伸ばしています。
マーケティングの主な戦略
マーケティング活動を進めていく上で、重要なのはマーケティング戦略をしっかり策定することです。マーケティング戦略とは、誰にどのようにいくらでプロダクトを提供するのかの方向性を定めることです。戦略を規定する上で、フレームワークを活用することが有効です。ここでは代表的なフレームワークをご紹介します。
3C分析
最初に紹介するのは3C分析です。3CはCustomer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の頭文字から来ています。それぞれの視点を分析することにより、市場環境の概要を理解することができます。
まずCustomerで市場規模がどれくらいで、どのような顧客がいるかを把握します。Competitorでは市場にどのような競合がいるのかを理解します。最後に、Customer、Competitorの情報をもとに自社の強みは何かを分析します。幅広い視点で市場を把握するのに有効です。
SWOT分析
SWOT分析とは、社内外の環境を把握するためのフレームワークです。SWOTでは、Strength(自社の強み)、Weakness(自社の弱み)、Opportunity(外部の機会)、Threat(外部の脅威)を分析します。
SWOTを分析することにより、戦略の方向性を定めることができます。例えば、自社の弱みと外部の機会を掛け合わせることで弱点補強戦略の方向性が規定できます。市場環境から戦略方向性の策定に活用します。
STP分析
STP分析は、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の頭文字からきています。
自社が誰を狙うのか、どのように戦っていくかを決める戦略の肝です。
セグメンテーションでは、ターゲティングを決めていく上で市場をどのように細分化するのかを決めます。例えば、性年齢でわけるのか、それても趣味趣向でわけるのかなどです。これにより、市場規模や特徴などを把握することができます。
ターゲティングでは、セグメンテーションでの細分化を元にどの層をターゲットと設定するのかを規定します。
最後のポジショニングでは、規定したターゲットに自社がどのような価値を提供するのかを競合との差別化などを参考に規定します。STP分析でしっかり戦略を決めることにより、その後の施策を検討する際の指針になります。
4P分析
4P分析はマーケティング・ミックスにおいて施策を検討する際に活用するフレームワークです。4Pは、Product(商品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)からきております。STP分析で規定した戦略をベースに施策を検討し、各要素に抜けがないのか、一貫性がある施策となっているかを確認するのに活用します。
マーケティングで重要なこと
マーケティングの手法、フレームワークをご紹介しましたが、実際にマーケティングを進めていく上で重要な点をご紹介します。
深い顧客理解・ユーザー目線
一点目は顧客理解を深め、常にユーザー目線でいることです。マーケティングとは、顧客に購入してもらうための仕組みを作ることであり、主語は常に「顧客」です。過去は価値観が単一的だったこともあり、企業が一方的にコミュニケーションが効果的でした。
しかし、現在顧客が多様化し、顧客がどのようなものを求め、どのように感じるのかをしっかり理解することが欠かせません。広告を見たときにどのように感じるのか、商品を購入することでどのような価値を得るのかなど常にユーザー目線で物事を捉えることを意識しましょう。
MECE
MECEとは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略語であり、抜け漏れなく重複しないという意味です。
マーケティング戦略を進めたり、市場調査をする上で欠かせない考え方です。例えば、ターゲットを考えるときに、「学生」「社会人」「男性」というカテゴリーに分けたとします。しかし、男性学生も社会人男性もおり、重複した部分が存在します。このようなことを避ける考え方が、MECEです。先程紹介したフレームワークなどを活用し、常にMECEが成立しているかを検討しましょう。
チームビルディング
また、マーケティングを進める上で絶対に忘れてはいけないのが、一人では進められないということです。もし、プロダクトをリリースした後に修正事項が発生したら、システム側に依頼しなければいけません。もし、データを分析したければアナリストの協力が必要かもしれません戦略の実行には営業の協力が必要です。
このようにマーケティング業務は、マーケティングの部署単体では実行できません。各部署との連携が絶対必要になります。そのためにも、しっかり社内でチームビルディングを行うことを忘れずにいましょう。
日本の抱くマーケティングの課題
日本は、高度経済成長期にみられるように製品中心の時代として成長して参りました。しかし、「良いものを作れば売れる」という成功体験から抜けられなかった結果、顧客視点のマーケティングの導入が遅れました。
そのような状況の中で、リーマンショックや他国から安価な高性能商品が輸入されてきたことで競争力を失いました。このような状況を打破するために注目されているのがマーケティングであり、CMOなど多くの企業が導入をはじめております。
しかし、旧来の体制や社内におけるマーケティングの理解が薄いといった影響でまだ普及には困難がある状況です。
AI時代の到来とマーケティングの趨勢
従来のマーケティングは集積されたデータを人がツールを活用して分析してきました。しかし、kの工程がAIによって代換されようとしています。すでにAmazonのレコメンド機能など、すでに導入している企業も多くあり、今後マーケティングは大きく変わっていくと思われます。
例えば、顧客の趣味嗜好にあわせた服や商品のレコメンドや顧客対応がチャットボットの活用、ビッグデータの分析などの自動化などがあります。AIがマーケッターの仕事を奪うとも言われていますが、AIを活用することで今後マーケッターの仕事より効率的により効果的になっていくと思われます。マーケティングをしていく上で常に新たなニュースを追うようにしましょう。
まとめ
本稿では、マーケティングとはについてご紹介してまいりました。現在の日本においてマーケティングは欠かせない手法です。そのときに重要なのは、常に顧客視点にたち、抜け漏れなく戦略をたて、社内のチームとして向き合うことです。今後AIをはじめ、新たなテクノロジーがどんどん発展していくと思われます。しっかりと最新のトレンドを追いながら、自社の最適なマーケティングを検討しましょう。
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