スタートアップに注目が増えていることで、スタートアップへの転職を検討されている方も多いかと思います。しかし、実際スタートアップで働くことの実情がわからないという方も多いのではないでしょうか。本稿では、スタートアップでの転職の現状、転職のデメリット、メリットなどをご紹介します。ぜひご参考にしてください。

スタートアップ転職の現状

最初にスタートアップの転職の現状をご説明いたします。皆様も肌感としてスタートアップへ転職している人が増えていると感じる人も多いかと思います。

スタートアップを仮に1−29人以内の企業と捉えた場合、統計局労働力調査によると、スタートアップへの転職者数は2011年頃より横ばいの推移であり、ここ数年で大きく変わっておりません。(図1)

総務省統計局-増加傾向が続く転職者の状況 ~ 2019 年の転職者数は過去最多 ~ より

このようにまだ人数的には大きく変わっておりませんが、スタートアップへの転職が増えていると感じる理由の一つに、大企業からのスタートアップへの転職という新たな層が少数派ですが登場しているからです。

日本では、従来より失敗に不寛容な文化的背景や経済不況が続くことにより安定思考が強まっている結果、起業家やスタートアップへの転職というのは変わり者というイメージがありました。

しかし、近年年功序列や終身雇用など従来の日本起業に限界を感じ、自分の力を試したいというリスクや心配をいとわない若い層が大企業からスタートアップに転職する例が増えています。事実、近年注目されているスタートアップの多くは大企業から独立した起業家が立ち上げたという例もあります。このように大企業からスタートアップ転職、独立する層が登場してきたことにより、スタートアップへの転職のイメージ向上につながっていると考えられます。


一体何がリスクなのか

スタートアップへの転職のリスクとして、よく考えられるのは年収面そして事業継続性の問題です。もちろんポジションや企業のステージによっても変わりますが、大企業からの転職の場合一定の年収・給与が下がる可能性が高いです。また、もちろん大企業のような福利厚生なども期待できません。ストックオプションなども可能性としてはありますが、今まで同様の待遇が難しいというリスクがあります。

また、スタートアップは起業の性質上事業運営がうまくいかなかない場合、事業撤退や事業転換を行う可能性もあります。このように事業継続性が見えないため、職の安定性が保てないということもリスクの一つとなります。

このように転職を検討している場合は、年収面や安定性などのリスクを頭に入れておきましょう

環境は変わっているという見方も

しかし、スタートアップのエコシステムが整備され始めてれたこともあり、環境が大きく変わってきているという見方もあります。例えば、以前はスタートアップやベンチャーといえば、安給料で長時間労働させられるブラック企業といったイメージがありました。

しかし、VCによる投資や大企業によるCVCなど資金調達額が増えてきたことや優秀な人材を得るためには高い給料を支払う企業が増えてきています。例えば、JICリクルートメントとの調査ではスタートアップへの転職の平均年収は720万という調査結果もでています。(*スタートアップ転職、年収720万円超 上場企業越え )このように、平均年収など待遇面が改善されはじめてきたことにより、今後さらに優秀な人がスタートアップに転職するという機会が増えていくだろう。

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スタートアップへの転職のデメリット

スタートアップの転職環境に関して、ご紹介してきましたが続いて転職のデメリットとメリットをご紹介します。メリット、デメリットをしっかり認識した上で転職を検討しましょう。まずはデメリットですが、上記のリスクとしてもご紹介したように、年収の低下や安定性が担保できないといったものがあります。ここではそれ以外に発生しうるデメリットをご紹介します。

職務内容に柔軟性が求められる

スタートアップはまだスタッフが充実していない状況なことが多く、エンジニアで入ったとしても営業を行わなければならないことや、経理で入ったが人事までもやるなど想定した職務内容を超えた業務をこなさなければならない場合が多いです。

また、スタートアップはビジネスや事業運営が定まっていなかったり、業績が良くない場合、突然の事業内容の変更などもあります。その影響を受けて、業務内容がまるっきり変わることも考えられます。このように専門家として入社しても、他の業務も常に想定していなければいけません。このような変化を好まない人にとってはデメリットとなりえます。

社内環境が不整備

大企業などからの転職の場合、社内環境の不整備もデメリットの一つとして考えられます。一つは労働環境です。例えば就労条件や福利厚生などが整備されていません。しかし、スタートアップの初期はハードワークが求められます。その結果、ブラック企業と噂されるような働き方を求められるケースもあります。

また、大企業や投資銀行では仕事の進め方や意識などで一定レベルある人が多いです。しかし、スタートアップでは勝手に優先順位をつけてやりませんでしたなどというようなことがあり、同様のレベルを求めることが難しいです。このように、労働環境や周りにいる人間の違いなどが大企業と大きく違うというデメリットも想定しておきましょう。

スタートアップへの転職のメリット

デメリットをご紹介してまいりましたが、スタートアップへの転職によるメリットもご紹介したいと思います。

裁量が大きい中でチャレンジが出来る

スタートアップは、従来の年功序列などのルールがなく、個人それぞれの自主性が求められます。また、人材が足りないことが往々にあるため、幅広い職務も求められます。このような環境の中で、結果が出れば良いというマインドも加わり、個人が今まで以上に裁量を持ち、チャレンジが出来る環境なのがスタートアップです。そのため、大企業などと比較しても短期間で様々なチャレンジが出来るため、成長できるというメリットもあります。

エグジットでの報酬が期待できる

スタートアップは、通常のベンチャーと違いM&Aや上場などのエグジットを目標としています。エグジットを目指すことにより、起業家はもちろん、VCなどが巨額の利益を目指すものです。

スタートアップのビジネスがうまく成長することにより、従業員も株式を分割してもらえたり、株式を割安で購入できるストックオプション権を得られ、年収以外の形での報酬を得られる可能性があります。

スタートアップやベンチャーに転職する人の多くはこのストックオプションを期待する人も多いかと思います。しかし、ストックオプションをしっかり決めている企業も少ないのが事実です。転職する際にこのような条件をしっかり確認するようにしましょう。

スタートアップで働くことは待遇が下がる一方で、成長のチャンスや、大きな利益を得る可能性もあります。このようにしっかりデメリットやメリットを理解した上で自分の目指す働き方とあっているのかなど確認しましょう

スタートアップ企業で活躍するために養うべき力

スタートアップで活躍できる人ために必要な能力をご紹介します。転職するまでにこのような能力を養いましょう。

柔軟性

ご紹介してきたようにスタートアップは環境が大きく変わる可能性もありますし、自分の職務以外の領域も対応しなければならないケースもあります。このような状況に対応できる柔軟なマインドが大事です。

自主性

スタートアップでは決まった業務はありません。日々、状況は刻々と変化し、そのための解決策を探さなければなりません。そのためには、指示を待つのではなく、常に自分で判断出来ることが重要です。

スピード感

スタートアップと大企業ではスピード感が全く違います。意思決定スピードだけでも、大企業では様々な場所に稟議を取る必要があるに対して、スタートアップでは社長の意思一つで決まります。スタートアップでは、短いサイクルで改善を繰り返すことが重要です。このようなスピード感に対応出来ることを意識しましょう。

スタートアップ企業へ転職する際のコツ

ご紹介したメリット、デメリットなどを念頭におきながら、自己分析を行うことが重要です。しかし、自己分析だけではなく、しっかり企業についてもリサーチをすることが重要です。スタートアップは企業として未成熟なため、情報が流通していない場合が多いです。そのため、Googleで検索するといったことや、転職エージェントや知人などから可能な限り情報を集めるようにしましょう。例えば、Googleで検索した際に関連ワードとして、詐欺などと出てくる場合もあるため注意をしましょう。

スタートアップ経験者が大企業のトップ層を任されることも

スタートアップへの転職の厳しい部分もご紹介してきましたが、今後スタートアップ出身者もまだまだ多くのチャンスがあるという見方もあります。実際多くの大企業でスタートアップ出身者が役員などの経営ポストに着任しています。今後大企業がデジタルトランスフォーメーションや新規事業を開発していく上で、スタートアップ出身者に声をかけていくケースがますます増えてくる可能性があります。

スタートアップへの転職でキャリアアップを目指そう

スタートアップに転職することは、ストックオプションなどのエグジットでの報酬などを目的としているイメージが強いと思います。しかし、今後スタートアップエコシステムが整備され、スタートアップのイメージが向上していくことでのキャリアップのステップとしても有効になっていくと考えられます。キャルあアップを目指している方の選択肢にスタートアップへの転職も検討してみてはいかがでしょうか。