シリコンバレー、ベルリンなど世界の様々なエリアでスタートアップが注目されていますが、今月話題になっているインドのスタートアップニュースをご紹介します。

AIスタートアップEurekaがシリーズBで2000万ドル獲得

AIスタートアップEureka(エウレカ)がシリーズBで2000万ドルの投資をうけました。EurakaはAIシステムのSpectrumを開発しました。Spectrum(スペクトラム)は携帯の通信状況を解析することで、企業が通信企業とともに新たなサービスを提供する助けをしてくれます。すでにインドを始めとして東南アジア、中東にサービスを提供しており、欧米にもサービスを広げていく予定です。

今回投資をしたのは、Apis Partners、 (アピスパートナー)Gobi Partners(ゴビパートナー)、the Riyadh TAQNIA Fund(リヤドタニアファンド)、MEC Ventures(MECベンチャーズ)からなるVenture insurtech fund(ベンチャーインシュテック ファンド)、SG Innovate(SGイノベート)、 GDP Ventures(GDPベンチャー)、 Pacific Bridge(パシフィックブリッジ)、 B&Y Ventures(B&Yベンチャーズ)、 Cianna Capital(チャイナキャピタル)です。

今までの投資してきた、Softbank(ソフトバンク)、PPF Home Credit(PPFホームクレジット)、East Ventures(イーストベンチャーズ)に参加した形になります。今回の投資を受けてEurekaはバンガロールの開発拠点への投資とさらなる世界進出に活用するとのことです。


Microsoft CEOサティア・ナデラ、そしてアメリカ大統領ドナルド・トランプが2月に訪印

Microsoft(マイクロソフト)のCEOサティア・ナデラが2月24日から3日間にインドを訪問する予定となっています。インドでは、24日ではムンバイにてビジネスリーダーに向けて、今後のデジタルトランスフォーメーション時代においてインドのデジタル企業がどのような立ち位置を示すのかについて語る予定です。また、続く25日ではバンガロールでもTechSummitに参加し、ニューデリーでは学生、起業家、エンジニアも会話する予定になっています。

インド大統領との面会も調整していたが、アメリカ大統領ドナルド・トランプも同じ日程で訪印する予定になっており、正式に決定していません。トランプ大統領も同じくインドの企業トップとの会談を調整しているが、どの企業が参加予定かは公開されていません。

Uberがインドで2020年末まで1500台の電気車両を提供へ

Uber(ウーバー)がインドにて現在350台の電気車両を1500台に拡大することを発表しました。この拡大は自動車だけに限らず、2輪・3輪含めて拡大していく予定となっており、インドの地元スタートアップと協業して進める予定になっています。協業相手の1社はSunMobility(サンモビリティー)で、OEM企業に対して交換可能なバッテリーの提供や、充電施設などを提供することになっています。

また、電気自転車を提供するYulu(ユール−)ともパートナーシップを結び、UberユーザーがダイレクトにYuluアプリにアクセスできる仕組みも開発しました。それ以外に電気自動車メーカーMahindra(マヒンドラ)との提携では、計100台の電気自動車の提供が決まっています。

このような提携の背景には、Uberが今後中国に続くモビリティー経済が発展する市場として注目をしているからであり、現在Bounce(バウンス)、Quick Ride(クイックライド)などのプレイヤーがこの2年で成長している中でどのようにUberもしっかり生き残っていくのかにおいて重要なタイミングとなっています。

現在Uber車両は3分の2が自動車で、3分の1が2輪の中で今後その比率を50%に変え、インド経済にあった形に変えていくことも目論んでいると東南アジア代表のParameswaranは語っています。

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アート、建築、行動主義の芸術祭「Kala Ghoda Arts Festival」の今年のテーマは“Threat”

Kala Ghoda Arts Festivalが今月ムンバイで閉幕しました。Kala Ghoda Arts Festivalとは、アート、建築、行動主義の芸術祭であり、今年で21回目の開催でした。この芸術祭では、アートを通して様々な社会的メッセージを伝える目的もあり、今年のテーマは“Threat”でした。

展示の一つにMagic Bus Foundation(マジックバスファンデーション)による‘Ropes of Poverty‘ではインドの子供たちが夢を叶えたり、学習したりすることへの制限を受けていることの象徴として制作されました。インドではアートは、まだ鑑定家のためのものと思われ市民から恐れられている一面もあります。しかし、アートにはMagic Bus Foundationの事例のように社会的なメッセージを伝え、そして人々の生活を変えていくきっかけにもなると考えられており、今後同様の芸術の開催などアートの領域への期待も強まっています。

インド全企業がサイバーセキュリティーの危機直面

インドのCERT-Inの発表によると、2019年末時点で313,000件を超えるサイバー攻撃が発生しており、この2年でも急速に増加しています。サイバー攻撃は世界でも大きな問題となりはじめていますが、インドでは、クダンクラム原子力発電所がサイバー攻撃を受けたこともあり脅威が広がっています。

実際Cisco(シスコ)の調査では、インド企業3社に1社はセキュリティー侵害により大きな経済的損失を受けていると判明しました。その中の24%は100万ドル以上を失っています。このようにインドのサイバー攻撃がとても大きな問題になっていますが、サイバー攻撃は金融資産だけでなく、プライバシー情報、知的財産情報などの盗難やシステム破壊などもあり、全産が驚異にさらされている可能性があります。

例えば、ヘルスケア業ではもっとも機密性が高い医療データが、病院や診断所がオンラインにつながることにより盗難される可能性もありますし、一番わかりやすいEコマースの領域でもフィッシングや支払い詐欺などサイバー攻撃は止まりません。また、電力なども発電所がオンラインにつながることにより攻撃対象となる可能性があり、大きな経済損失につながる可能性があります。

このようにサイバー攻撃は大きな脅威になっているが、インドではサイバーセキュリティーへの対処が遅れていることがこれに拍車をかけています。サイバーセキュリティー対処やデータに対応する役員がいないなどガバナンスの問題があります。今後サイバーセキュリティーの問題は適正に対処しなければいけない問題となるでしょう。

インドで2020年投資すべき電気自動車業界

現在電気自動車が既存の自動車、ガソリンに取って代わる存在となる中でインドでも大きく注目されています。世界の電気自動車関連の投資の割合は、インドの投資は1.6%とまだ小さな割合です。しかし、2017年2000万ドルから2019年には4億6500万ドルと投資額は伸長しており大幅に増加しており現在の注目度がわかると思います。

これには電気自動車がインドにもたらすメリットが多くあるからです。一つは、輸入依存からの脱却です。現在インドの原油輸入額は850億ドルにも登っており、EV登場によりこの状況を改善できると考えられています。また、空気清浄化も大きなメリットになります。インドでは空気の汚染が一つの大きな問題になっている中で、EV化することにより再生可能エネルギーへ移行が進み空気の清浄化が進むと考えられています。最後はユーザーコストの削減です。現在インターネットの普及も伴い、国の隅々までのデリバリーを求められ、モビリティーが一気する中で、2輪車、3輪車、自動車含めガソリンから電気になることにより、メンテナンス、運用コストが40%近く下がるといわれています。

実際、Bigmarket(ビッグマーケット)、Zomato(ゾマト)などのデリバリー企業が電気車両へと移行も発表しています。しかし、課題も同時にあり、高額な初期投資や充電インフラの不足などです。現在大企業も含めてこのような状況を改善するための開発や新規サービスの開発などを行っています。

例えば、サービスの面ではYulu、SmartE(スマートE)といったスタートアップが電気車両をベースとしたライドシェアリングを提供し始めています。このように、インドの今後において電気自動車は投資先として注目されている市場ですが、通常3−4年ベースでの投資に比べて、8−10年程度を見据える必要があると思われます。企業側は自社のサービスの差別化ポイントを考え、収益可能なことを証明しなければならないでしょう。まずは2輪、そして3輪と浸透していき、その後4輪、バスなどに浸透してくでしょう。

銀行がペイメントアプリ経由のATMサービスにルールを求める

Phone Pe (フォーンペ)がUPIを活用した新しいATMサービスを提供しました。インドではATMで2万ルピー(約3万円)をおろせるATMしかなく革新的なサービスとなるのではないかという期待もあります。サービスを提供し、すでに1日で10万トランザクションがあり、Phone Peユーザーの販売業者1000万のうち、100万ユーザーはATMアカウントを作成したとのことです。

UPIとは現在インドで開発が進められている独自の認証コードを発行して利用できる決済サービスであり、NPCIが開発を行いました。UPIはデジタル上で一般ユーザーが商業者と取引も可能にするシステムですが、銀行等からこれに規制をかけるべきという懸念を示しており、現在ユーザーへの課金などを対応しようとしていますが、それによるサービスのマイナスの影響も考えられています。しかし、現在開発に近い情報では出金制限を2000ルピー(約3000円)、一日3回上限にしようとするなど進められており、今後の動きが注目されています。

まとめ

今月のインドのスタートアップ情報に関してお伝えしてまいりました。マイクロソフトCEOやトランプ大統領が訪印するように現在、インドのスタートアップは注目をされており、今後中国につづく新たな市場としてきたいされています。その中で、急速なモビリティーの進化に伴う電気自動車の拡大、そしてAIの活用の領域が今後特に注目していくべき領域となるでしょう。しかし、その一方で急速に発展していく影響もあり、サイバーセキュリティーの影響の懸念やビジネスだけでなく社会にどのように影響を与えていくのかが大きな課題伴っています。今後もまたインドのスタートアップの動向に注目していってはいかがでしょうか。