TikTokほど陰と陽の二元論を体現している企業はないでしょう。

米中の地政学的な争いや社内における経営層の交代の中、TikTokはプラットフォームコミュニティとして、さまざまな戦略を打ち出し、達成し続け、2020年12月の時点で、Facebookを抜いて世界で最もダウンロードされているアプリになりました。

また、複数の収益源を確保し、ビジネスとしての存続性を強化するための戦略的な決定もしました。

昨年秋には、広告プラットフォーム「TikTok for Business」を発表し、Shopifyと提携しました。これにより、Shopifyの加盟店はTikTok上で広告キャンペーンを簡単に作成できます。

2020年12月初旬、アメリカのニュースサイト The Vergeは、TikTokがYouTubeに対抗するために、現在の60秒から3分間の動画を公開することを考えていると報じました。 [1]

そして12月中旬には、TikTokがSamsungと提携し、初めてスマートテレビ市場に参入することを発表しました。これらの大規模な取り組みは、パンデミック環境下でどれだけ消費者がエンターテイメントに飢えているかを物語っています。

InstagramがTikTokに遅れて15秒のリール再生機能をリリースした際、Instagramの最高経営責任者(CEO) であるAdam Mosseriは、CNBCに「TikTokはおそらく我々が今まで見てきた最も手ごわい競争相手」と発言しています。

それは、Instagramがストーリー機能をリリースした際に「Snapchatののマネ」と言われていたことを思い出させます。

Instagramのリールズを立ち上げる際には、Nathan ApodacaがOcean Sprayのボトルを飲みながらスケートボードで通勤し、Fleetwood Macの1977年のヒット曲 “Dreams “に合わせて歌を口ずさんだことが話題になったように、TikTokの素晴らしい取り組みへの反応も考慮されていたことも考えられます。[2]

この動画は2020年のトップバイラルセンセーションの一つとなり、7,000万回以上の再生回数と1,000万回近くの「いいね!」を獲得し、世界的なパンデミック、米政界の分裂、社会の激変に悩まされた激動の一年の中で、ポジティブで「純粋なバイブス」の時間を作り出しました。

しかし、会社が事業を確実なものにするために取った大きな前進にもかかわらず、TikTokの悲痛な既視感と不吉な予感を感じています。

すべてがうまくいっているプラットフォームのように見えつつ、同時に、その破滅に向けて準備されているかのように感じます。

TikTokのバイラルブランド化問題

私たちは、これまでに登場したあらゆるソーシャルプラットフォームで、この瞬間を経験してきました。

プラットフォームが立ち上げられ、コミュニティが独自のコンテンツとルールを持って発展し、トップパフォーマーが強力な影響力を行使する。

そして、必然的にマーケティング担当者がプラットフォームを発見し、ビジネスとしての可能性が見えてくるのです。

Ocean Sprayのバイラルビデオでは、TikTokの民主化が感じられます。 

まだ誰もNathanを知らなかった数ヶ月前、37歳のアイダホ州出身の彼がポテト倉庫での仕事に向かう途中、トラックが道端で立ち往生してしまいました。

彼はアイダホの滝の高速道路をスケートボードで下っている25秒のビデオを投稿しました。

この投稿が世の中に大きなインパクトを与えることとなります。

多くのクリエイターは #DreamsChallenge というタグを介してその瞬間を再現した動画を投稿し、大きなトレンドとなりました。

有名な深夜番組の司会者Jimmy Fallonや Mick Fleetwood、Stevie Nicksなど、数え切れないほどの著名人もこのこのトレンドに乗りました。

Nathanのバイラルビデオのおかげで、Fleetwood Macは43年前の曲が多くの音楽チャートでトップ10に返り咲き、ここ数ヶ月の間にいくつかのストリーミングチャートでトップになっています。[3]

これは、ソーシャルメディアコミュニティにとってだけでなく、TikTok自身にとっても、このアプリがアメリカでダウンロード禁止の対象となったことを考えると、有益な時間でした。

残念なことにこれは同時に、このプラットフォームとコミュニティを特別なものにしてきた「あるもの」にとって、死の鐘となるのではないかと私は心配しています。

それは、独自性のある、自作のコンテンツを高め、社会に広める能力です。

FacebookやInstagramのようなソーシャル・プラットフォームは、代理店がバイラル性を約束したから、あるいはクライアントがバイラル性のある施策を要求したことにより、予算を投下するマーケターの流入を経験してきました。

そして、プラットフォーム上でブランドにバイラル性があると発見した瞬間、彼らはより多くのバイラル性を獲得するために分析を始めます。

バイラルなコンテンツを意図的に設計しようとするのは、「偶然」を実現させようとするようなもので、頑張れば頑張るほどうまくいかなくなります。

この現象は、クリエイティブやマーケティング、PRの種類があまりにも多く、バイラリティやコミュニティを根本的に誤解している、あるいは理解しようとしないという事実に起因しています。

マーケターそれを、プラットフォームに内在するものであり、必要に応じて創り出すことができるもの、自社のサービスやプロダクトを販売する機会として考えています。

バイラル性は有機的なものでなければいけません。

その起源は自然なものであり、研究室や役員会議室でも、デザイナーズ物件の会議室でもない。

それは不思議なことに、不可解なことに、そしてランダムに起こるのです。

バイラルコンテンツを開発しようとするのは、「偶然」を実現させようとするようなもので、努力すればするほどうまくいかない。

だからといって、プラットフォームを使っているから、あるいはミレニアル世代やZ世代の行動を研究しているから、というマーケターたちの一生懸命な気持ちを抑えることはできません。

そしてすぐに、オーガニックなコミュニティによって目立っていたプラットフォームは、ブランド化されたコンテンツで溢れかえります。

ユーザーのクリエイティビティや質に頼ることよりも、知名度や影響力を獲得するためにそのプラットフォームを使いたいブランドやマーケティング会社と、そういった会社の注目を引きつけたいユーザーによって動かされるようになります。

間もなく、そのプラットフォームはもはやコミュニティではなく、別のマーケティングチャネルになってしまう。

TikTokではすでにそれが起きているのを感じ取ることができます。

Nathanの”Dreams”の投稿は、企業とそのクライアントの中でも最もソーシャルメディアを嫌う人々にすら、Ocean Spray の売上の急増に注目し、TikTokの視聴者を通じたビジネスの成果を夢見ることを気づかせてしまったのです。

Ocean Spray も #DreamsChallenge に便乗

その一環として、Ocean SprayはNathanに感謝の気持ちを込めて、赤い日産のトラックをプレゼントしました。

マサチューセッツ州を拠点とする農業協同組合は、Nathanの動画をきっかけに、ヒスパニック系消費者をターゲットとした初の全国キャンペーンも開始しています。

Nathanのラスベガスでの休暇は、シーサーズパレスカジノの提供によるもので、カジノ側は独自のハッシュタグを付けて彼を歓迎していました。

Ocean Sprayの新CEOであるTom Hayes氏もTikTokに参加し、Nathanの賛辞を述べています。

しかし、Nathanは新しいトラックを手に入れようとしたのでもなく、ラスベガスでの1日を過ごそうとしたのでもなく、テレビCMやオーシャンスプレーの注目を浴びようとしたのでもありません。

彼は車が故障した後、高速道路をスケートボードで下っていただけなのです。

この現象は、バイラルになろうとするブランドと、「おいしい案件」を獲得しようとするインフルエンサーの両方から、同じようなコンテンツや手の込んだ努力を生み出すことになるでしょう。

私はこれまでにも、この現象を見てきました。

2000年代に、IBMとゼネラルモーターズの両方で最初のソーシャルメディアのリーダーを務めました私は、ブランドがソーシャルプラットフォームに乗り出し、ともに成長し、消費者セグメントの大きさを考慮した予算を要求することが当たり前のことだと感じていました。

当時は、特定の顧客層を追うというよりも、若い世代のオーディエンスが従来のマーケティングチャネルよりも新しいソーシャルメディアやプラットフォームに多くの時間を費やしていることや、FacebookやTwitterを主に利用するユーザー世代と関連性を維持したいと考えているブランドは、新聞やテレビの広告を介してそれらにアプローチできなくなっていたことを知っていました。

それは、次世代の消費者を追求することと言えるのではないでしょうか。

しかし、その環境の最前線にいることで、私はマイナス面も見ることができました。

つまり、マーケティングがプラットフォームを乗っ取るとプラットフォームの性質がどうなるのか、プラットフォームに乗ったことのないマーケターがプラットフォームのキャンペーンを開発しようとしたり、プラットフォーム上で無料のツールを配布して、自分たちのフォロワーの大きさを自慢している恥知らずな自称お偉いさんたちから、メールや電話を受けたりすることなどです。

それは良い終わり方ではありません。

プラットフォームはお金を第一に考え始め、ユーザーのコンテンツは自己表現ではなく、影響力のための戦略的な表現になってしまいます。

TikTokがプラットフォームとしてその独自性を維持するためには、そのリーダーシップ、そしてそれを作ってきたユーザーコミュニティが今後注意を払う必要があるでしょう。

特に、TikTokはオリジナルコンテンツとスポンサー付きコンテンツで適切なバランスをとり、どの程度までマーケティングチャネルとしての展開していくか判断する必要があります。

Apodacaは、TikTokによってブランドにもたらされた「プロメテウスの火[4]なのかもしれません。

しかし、主神ゼウスがプロメテウスを罰したことは忘れてはいけません。

マーケティングプロモーションで溢れるFacebook、Instagram、Twitter、および他のプラットフォームにTikTokが続く場合、罰されてしまうでしょう。


コンテンツ提供:Christopher Barger
原文:Don’t Let Marketers Ruin TikTok


[1]…TikTok beats out Facebook to become the top app worldwide by downloads
[2]…Meet Nathan Apodaca: The Viral Fleetwood Mac Skateboarder
[3]…BTS’ ‘Dynamite’ Dominates Billboard Global Charts, Fleetwood Mac’s ‘Dreams’ Thunders to Top 10
[4]…ギリシア神話においてプロメテウスが人類にもたらした火。 プロメテウスから火を授かった人間は、幸福になる代償として高度な文明と共に争いや苦難も持つようになった。