Facebook、Airbnbの台頭などIT業界を中心に、スタートアップという言葉が定着してきたかと思います。しかし、なんとなく意味はわかるけど、具体的にどのようなものか説明出来ないといった方も多いかと思います。本稿では、スタートアップとはなにか?よく間違われるベンチャーとの違い、そして日本においての課題をご紹介します。スタートアップのことを知りたい方や、起業を検討している方の参考になれば幸いです。

スタートアップとは?

スタートアップとは、アメリカ シリコンバレーを中心に発展してきた現象です。スタートアップという言葉自体は、「立ち上げ」「操業開始」などと直訳されますが「創業間もない企業」をさします。しかし、創業間もない、小規模な歴史の短い企業をすべてスタートアップと呼ぶわけではありません。

明確な定義付けがされていないため、使用者によってニュアンスは違いますが、一般的には設立年数や規模などとは関係なく、新しい市場やビジネスモデルや社会への課題解決に挑戦している革新的な企業をさします。


スタートアップの歴史

現在日本は第4次ベンチャーブーム到来と言われており、多くのスタートアップが設立しております。ここで日本のスタートアップの歴史をご紹介します。

第1次ベンチャーブームは、1970年代頃より高度経済成長期の頂点で投資意欲の向上、脱サラブームが背景で始まりました。この頃に起業した有名企業には、日本マクドナルドやコナミ、ニトリなどがあります。しかし、このブームも第一次石油ショックの影響で終焉を迎えます。

第2次ベンチャーブームは、JASDAQなどの株式公開緩和やVC設立の乱立などを受け1983年頃に始まりした。ちょうど同時期にアメリカでもベンチャーブームが勃発しています。この頃設立された企業として有名な企業はソフトバンク、H.I.SやCCCがあります。しかし、プラザ合意による円高不況を受け、大型ベンチャーの倒産が相次ぎ終りを迎えました。

第3次ベンチャーブームは、1995年頃から始まり今までのブームと比べても10年間程度長期間続いたことです。政府によるベンチャー優遇施策などが数多く打ち出されました。DeNa、サイバーエージェントなどの企業が設立しました。しかし、ライブドア事件やリーマンショックなどの影響を受け終焉を迎えました。

そして、現在の第4次ベンチャーブームです。官民ファンドやCVCファンド、AI、シェアリングエコノミーなどのあらゆる産業へのデジタル化が後押しとなり始まり、世界的なスタートアップブームにもなっています。これがただのブームなのか、文化として定着するのかは今後の動向を見続けましょう。

スタートアップとベンチャーの違い

スタートアップとよく混同されがちな言葉に、ベンチャーがあるかと思います。ベンチャーとは、英語での“Venture”はどちらかというとVC(ベンチャーキャピタル)など投資側を指す言葉です。しかし、日本で使われているベンチャー企業は日本人が作った和製英語であり、「大企業が参入していない領域で新しい技術やノウハウを駆使する中小企業」のことをさします。

スタートアップが新しい市場やビジネスモデル、社会の課題解決に挑戦しているに対して、ベンチャー企業は一般的に小さな会社、中小企業のことをさします。

[PR]ビシネスニュースアプリ「INFOHUB」をダウンロードしよう

スタートアップの特徴

ここからは大企業、そしてベンチャー企業との違いであるスタートアップの特徴に関して具体的にご紹介します。

社会的な課題解決

まず最も大きな特徴として、スタートアップは社会の課題解決を目指すということです。もちろん企業なので収益も目指しますが、第一目的は稼げることではなく、「よりよい社会をつくる」という使命感です。もちろんそれは壮大なものの場合も、日常のちょっとした場合もあります。例えば、スマートフォンの普及といったハード面からAirbnbなどを代表する所有から共有という概念への移行やNETFLIXなどのストリーミングサービスなど様々です。それぞれが私達の生活を少し便利にしてくれ、新たな価値観を生み出すことを目指しています。

そのため、既存企業の後追いではなく、ゼロから生み出したり、組み合わせたようなアイディアからイノベーションを起こしている企業がほとんどです。大企業ではリスクが高くて手が出せないような不確実性が高い市場や、まだビジネスになっていない市場に使命感を掲げ飛び込み、新たな技術、アイディアで新たな価値を生み出そうとするのがスタートアップです。

このようにビジネスになっていないブルーオーシャン市場に今までの固定概念を破り、新たなイノベーションを起こし、主導権を握ることで最終的には大きな利益につながるのです。

スタートアップは、課題の大小問わずに、イノベーションを起こすことにより、よりよい社会を作ることを使命感にしている企業です。このようなイノベーションや課題解決の使命感がない中小企業は一般的にはスタートアップとは呼びません。

EXIT(エグジット)を意識

ベンチャー企業との大きな違いの一つとしては、EXIT(エグジット)への意識です。EXITとは日本語では出口であり、一般的にはIPO(新規株式公開)かバイアウト(事業売却)をさします。このエグジットに達する事により、創業者、投資家は大きな利益を確定することになります。

このエグジットを短期間で達成することを目標に事業を運営していくため、安定的な経営などは意識せず、事業開始当初はプロダクトへの投資に集中します。そのため、経営に回す資金を自分たちでまかなえない場合が多く、投資を受け事業を運営していくことになります。しかし、このプロダクトを成功させるという集中があるからこそ大企業にはないスピード感で成長することができ、近年みる大成功も達成できるのです。

しかし、一方でエグジットがうまく達成できない場合は、中小企業のまま運営を続けていくということやビジネスとしての成長が見えず解体という場合もあります。スタートアップの多くはビジネス展開が難しいと判断され解体になるケースがほとんどです。このようにスタートアップはハイリスクハイリターンなビジネスモデルともいえます。

スケール可能で、連続性のあるビジネスモデル

スタートアップはもちろん企業のため、キャッシュを生み出さなければいけません。そのためにはスケール可能で、連続性のあるビジネスモデルが必要になります。どのようなビジネスであったとしても規模が拡大していくようなビジネスでなくてはなりません。特にスタートアップの場合は少しずつの成長ではなく、急成長するようなビジネスモデルが求められています。

また、継続可能なビジネスであることも重要な点です。課題解決したとしても、一度利用してそれで終わってしまうようなプロダクトではなく、再現性があり、持続性がある仕組みづくりが重要になります。つまりただプロダクトをリリースするのではなく、ユーザーのニーズ、ユーザーの利用状況に合わせて常にプロダクトを改善していくことが求められます。

日本のスタートアップの課題

全世界的にスタートアップへの興味関心が高まっているが、日本では起業数も増えているがまだまだな状況です。この章ではなぜ日本のスタートアップ市場の拡大のための課題をご紹介します。

起業への関心が低い

ここ数年で増えてはいるが、起業に関心があると答える人は、16%とまだまだ少ないです。これは世界的にも低く、起業に向けてのチャレンジ精神が弱いともいえます。日本における高度経済成長移行の停滞を実感している世代からくる長年の安定志向で若者を含めて保守的になっているということです。また、日本の文化的な失敗への不寛容さの影響から、失敗はしたくないというマインドが強く根付いていることの影響です。この解決策の一つとして、子供の頃から起業に関する教育をしていく生涯教育やスタートアップなどに対しての意識を変える運動が必要だと考えられています。現在、海外の成功例などが入ってくることにより現在徐々に、起業意識が強まりはじまってきており、今後もこの傾向は続くでしょう。

日本のVCの規模

また日本はまだスタートアップの土壌が整っていないともいわれています。ご説明したように、スタートアップの起業当初はプロダクトへの投資に集中し、経営資源はVCからの投資に頼っている部分もあります。しかし、日本のベンチャー投資は、アメリカや中国に比べてまだまだ少ないです。2018年の段階で、米国9兆5千億円、中国3兆3千億円に対し、日本は、1,900億程度と比べ物にならないほどです。これは日本の起業がリスクを取りたがらないということからきています。

スタートアップに投資するVCは短期的な業績ではなく、最終的なエグジットでリターンを得ることを前提としています。しかし日本では、短期的な業績や売上を求めることが多くスタートアップの文脈とはズレがあります。また、日本はエグジットの規模がアメリカや中国ほど大きくないこともあり、リターンが思ったほど得られないということもあります。このように日本では他国と比べてスタートアップへの投資が活発でないのが現状です。

スタートアップを立ち上げや成功のポイント

ここまでスタートアップの特徴やスタートアップの環境に関してご紹介してきました。しかし、実際にスタートアップを起業すると行った場合には資金の問題が一番課題になります。本章では、スタートアップで資金調達をするため、これから成功するために重要なポイントをご紹介します。

どのような人材を採用するか

まずは、人材採用に関しての問題です。スタートアップでは、成長期に合わせて必要な人材、専門性が異なります。創業当初こそ、開発担当・ビジネス担当・デザイン担当という最小チームでも構成で進むこともあります。最小チームで猪突猛進にプロダクトの開発を進めていくケースも多くあります。

しかし、規模が大きくなっていく中で、スタッフを新たな人材を雇わなければなりません。まず必要になるのは、即戦力となる人です。しかし、スタートアップの場合簡単に人は集まりません。その時に、ファンダーの人脈、そしてミッションが大事なります。また近年、リモートワーク、複業といった形も増えてきているのでそのような手を活用することも特徴です。

また、ある程度の段階になったら、エグジットを意識して、実力のある経営陣を雇うということにより、自社の起業としての体裁を整えることも検討しましょう。

PMFがあるか?

PMFとはプロダクトマーケットフィットのことであり、Ebay創立メンバーの一人マーク・アンドリーセンにより提唱されたスタートアップに欠かせない概念であり、「顧客を満足させる最適なプロダクトを最適な市場に提供している状態」のことをさします。

どんなに素晴らしいプロダクトを作っても、市場がなければ成長できません。その上で、どのような市場を切り開いていくのか、そこにどれくらいのニーズがあるのかを意識しながら、そこに向けたプロダクトを開発することが必要になります。投資を受ける際も常に問われる点のため、常に自社のPMFを意識して事業を進めていくことが必要です。

倫理やガバナンス

スタートアップが注目される一方、スタートアップの倫理観が大きな争点となっています。Facebook(フェースブック)の情報漏洩問題、Uber(ウーバー)の倫理に反する企業行動など多くが巷の話題になりました。

ご紹介してきたように、スタートアップはエグジットを目指し、急成長することを目指しています。しかし、急成長だけに集中するがあまり、若いファンダーが倫理観を身につける前に成長してしまうケースがあります。

意図的に悪質なことをしているケースは少ないでしょうが、しかし成長にこだわるあまり実際の被害が忘れてしまうのです。スタートアップが大きく注目された今、企業の倫理観が大きな水準になっています。ビジネスを展開していく上でも、よりよい社会を目指すということを常に念頭におきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?近年注目されているスタートアップは社会を良くしようという使命感をもち、新たなイノベーションを起こそうとしている起業のことです。まだ日本は他国と比べてスタートアップを支援する環境がまだ小さいですが、現在政府、民間企業を含めてこの状況を改善しようと動いております。現在起業を検討している方もまずは自社がどのような課題を解決したいのかなどを検討しはじめてはいかがでしょうか?